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メールの送信元は、本宮くんだった。
ドキドキと高鳴る心臓の音が、静かな部屋に響き渡りそうなくらいにうるさい。
ゆっくりと深呼吸して、ギュッと目を瞑り、受信メールを開く。
少し苦しく感じるのは、無意識に呼吸を止めてしまっていたからか、緊張が高まり過ぎたからか。
強く瞑っていた瞼をそおっと開けると、短いけれども驚くような文章が見えた。
―――――――――――――――
from:本宮柳
title:無題
本文:明日はカフェに来てくれますか?
もし午後から時間あったら、遅めの昼ごはんに付き合ってくれません?
―――――――――――――――
まさかの本宮くんからの誘いに、何度も目を擦る。
読み間違いかと思って画面を顔に近づけるが、どうやら間違いではないらしい。
“来ますか?”ではなく“来てくれますか?”の文字が、なんだか彼らしい。
あまりの嬉しさに、暫しの間ぽぉっとしてしまっていて。
返事を返すことすら忘れていた。
返事……、なんてしたらいいだろうか。
男子学生って、絵文字とか使うのかな?
あんまり、喜びすぎてるのもウザいよね…。
だからと言って、簡潔すぎるのも、せっかく誘ってくれた本宮くんに失礼だろうし…。
このくらいなら、当たり障り無いだろうか。
―――――――――――――――
to:本宮柳
title:Re:
本文:先週はありがとう。
明日も行きます。
午後から、楽しみにしてるね。
―――――――――――――――
何度も打ち直してやっと返事を送ったのは、受信から15分も経ってからの事だった。
やっと返事を出来た事にホッとしたのも束の間。
一分も経たないうちに、今度は本宮くんから通話の着信があって。
慌てすぎて、手の上で鳴るケータイを危うく落としかける。
急いで通話ボタンを押すと、心地よい声が耳にじんわりと響いた。
「は、はい、もしもし」
『将吾さん? 本宮です。
今大丈夫ですか?』
「あ、うん、だ、大丈夫」
情けなくどもってしまい、恥ずかしさに顔が真っ赤に染まる。
これが電話で良かった。
面と向かってこんな風に赤面したら、いたたまれない。
けれど、どもった声で緊張は十分過ぎるほどに伝わってしまっていて。
『焦らなくていいですよ』
そう言ってふふっと笑う彼の声が鼓膜をくすぐるから、余計に恥ずかしさが全身を赤く染め上げた。
「ぅ゙…、ごめん…」
ついつい謝ると、本宮くんがまた笑って。
『さっきのメールの件なんですけど。
いつもの時間に来てもらうと待たせちゃうから、明日はゆっくり来てくれません?
2時までシフト入ってるから、1時半過ぎくらいに。
そのくらいの時間だと、ピークも過ぎてるんで。
軽くお茶でも飲んでてください。
で、そのあとご飯食べに行きましょう?』
淀み無い本宮くんの言葉に、僕の緊張も解れる。
本宮くんも楽しみにしてくれていることが、柔らかな口調から伝わってくるから。
「うん、わかった。
1時半過ぎね」
『何食べたいか、考えておいてくださいね。
じゃあ、おやすみなさい、将吾さん』
やっぱり、電話って怖い。
面と向かって会話するとしたらあり得ない程近くで、本宮くんの声がするんだから。
「うん、おやすみ。
…本宮…くん」
プツリと通話が切れて、無機質な機械音が響く。
それとは対照的な、本宮くんの“おやすみなさい”の声が、ずっと耳元を擽っていて。
頬がだらしなく緩んでしまう。
堪らずにぎゅうっと枕を抱き締めて、ジタバタと身悶えた。
だって、あの“ミヤくん”が僕を“将吾さん”って呼んでくれて、メールと電話までくれて、“おやすみなさい”って。
…どうしよう。
彼の声を反芻する度に、下半身に熱が籠る。
いや、だめだ、そんなことしたら、明日会わせる顔がない。
もう寝てしまおう。
そう思って、電気を消して本格的にベッドに入る。
でも、媚薬のように甘い声は、どうしたって頭から離れてはくれない。
寧ろ、暗い部屋のベッドの中というシチュエーションが、余計に妄想を煽る。
もう、本能には逆らえなかった。
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