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18 side 本宮柳
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将吾さんと連絡を断って、早二週間。
一日一日はとてつもなく長く感じるのに、一方でもう二週間も経ってしまったのかと、時間の流れの早さに驚く。
この二週間、俺は情けないほどに何も手に付かなくて。
バイトでも、大学でも、友人達に心配されるほどだった。
気ばかりジリジリと焦るのに、拒絶されることへの恐怖と不安が先立ち、一つも行動には移せない。
明日はまた、土曜日。
きっと将吾さんは来ないだろう。
鬱々とした気分のまま、癖のようにバイト上がりに久弥のアパートを訪れる。
正直面倒ではあるが、家に帰ってもどうせ部屋で一人悶々と悩むだけだ。
ならば久弥の世話でもして、少しでも気を紛らせていたかった。
いつものようにビール片手に玄関を開けた久弥は、けれども、いつもとはどこか違った目をしていた。
うまく言えないが、何かを吹っ切ったような、何かを決意したような、そんな表情。
将吾さんのことを考えたくなくて、何か作って気を紛らそうとキッチンに向かうと、珍しく水切りかごに食器が干してある。
俺の驚きを感じたのだろう。
久弥が背後で口を開いた。
「ちゃんと食べたよ」
振り向くと、久弥が笑ったような気がした。
自嘲ではない笑みを見たのは、かなり久しぶりだ。
「なんか…、あった?」
問い掛けると、久弥は無言のまま冷蔵庫からビールを取りだし俺に差し出して、ソファを示す。
ソファに座ると、真剣な眼差しの久弥が告げた。
「柳、今まで迷惑かけて悪かったな。
もう、決めたから」
“決めた”とは、勿論親父との事だろう。
「大丈夫なのか?」
ポツリと呟くように問い掛けると、久弥ははっきりと頷いて。
「うん。
正直、まだ怖いけど…今のままじゃ駄目だってことは、分かってるから。
結局俺は、樹さんから離れるなんて出来ないし。
いつまでも逃げてたって進めないし」
「そっか、頑張れよ」
そうだよな、逃げてたって進めない。
どん底まで堕ちた久弥の言葉が、深く胸に響いた。
「柳、迷惑ついでに、最後にもうひとついいか?」
「ん?」
久弥からの願いに、説明を求める。
「来週の金曜日、どっか泊まりに行ってくれないか?」
なるほど、そう言うことか。
「ん」
頷くと、久弥が皮肉な笑みで付け足した。
「無駄足になったらごめんな」
それだけはあり得ないだろうが、その答えは自分達で辿り着くだろう。
俺がどうこう言うことじゃない。
それよりも、俺は俺の答えを出さなければ。
「じゃあ、そろそろ帰るな。
なんかあったら、連絡寄越せよ?」
ソファから立ち上がると、久弥も立ち上がる。
「ああ、ありがとう」
すっきりした顔で、久弥が言う。
「頑張れよ」
玄関まで見送ってくれた久弥を振り向き、激励する。
整った顔に、微かにけれども確かに笑みを浮かべた久弥が、宣戦布告でもするかのように言った。
「ああ、勿論。
もう、後悔はしたくないから」
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