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18歳以上ですか?
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黄笠
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「…また間に合わなかったっス」
寝室のドアを少しだけ開けて
可愛い愛娘の寝顔を拝むと静かにドアを閉めた
「頑張ってたんだけどな
21時過ぎてもソファーで粘るから
どうしようかと思ったけど」
現在23時 これでもかなり巻いて帰って来たが
まだ5歳の子には充分夜中だ
先輩は夕飯を温めながら
そんな話をしてくれるけど
余計に帰って来れなかった事が悔やまれる
「…はぁ」
深い溜息を吐いてダイニングテーブルに座る
「…いただきます」
「ん…」
先輩は俺の向かいに座ると珈琲を啜っている
「んな 落ち込むなよ…
来週のお前のオフには一緒にハワイだろ⁇」
「…俺の事
ちゃんと覚えててくれてるっスかね…」
マネージャーに頼み込んで取ってもらった休み
張り切って旅行の計画を立てて
着々と準備も進んでるのに
俺はこの一週間 寝顔にしか会えていない
現地で抱っこさせてもらえなかったら…
なんて考えるだけで凹む
「…はぁ」
パスポートの可愛らしい顔を見てまた溜息が出る
俺と同じ金髪の腰まで伸びたサラサラヘア
先輩似のクリクリとして黒目がちの瞳
スッと通った鼻筋は俺なのかな⁇
この可愛らしい口はどう見ても先輩で
俺達の良い所取りをしているこの子は
幼稚園でもモテまくってるらしく
今から色々心配だ
「お前と違って頭良いし 忘れてる訳ねぇだろ」
「…だと良いんスけど」
先輩は一つ溜息をつくと
俺の隣に座り直して携帯を取り出した
「ほら これ今日の… 見てみろよ」
⁇
先輩の携帯に映し出されたのは
うちのデカイテレビだ
そこに黄色の髪をした後姿が画面に出てきた
「あっ‼︎先輩 テレビ近すぎっス‼︎」
「…うるせぇな ちゃんとこの後引き離したよ」
テレビから流れているのは
俺が水曜レギュラーを務めている
朝の情報番組だった
『パパー‼︎』
画面の中からいきなり聞こえた
一週間ぶりの高い声に一瞬驚く
『もしもし パパー⁇ 何してるのぉ⁇』
ワイプに映る俺に必死で話し掛ける姿は
思わず口を押さえる程可愛らしかった
「せ 先輩⁇ これ…」
先輩を見ると珍しくニッコリ微笑んでいた
「お前 時間ある時テレビ電話してくるだろ⁇
それと勘違いしたみたいなんだよ」
何スかそれ…俺今キュン死に寸前なんスけど…
『それ何時もの電話じゃないぞ
パパ お仕事頑張ってるから コッチおいで』
クルッと振り返った顔は少し残念そうで
トボトボとソファーに戻ってきた
『パパ この中で一番かっこいい』
『…そうだな』
「…先輩 今の間は」
「…気にすんな」
『パパと公園いると
女の人がいつもくるよ⁇』
うぐ… そうなんスよね…
子連れの時くらい遠慮して欲しいっス…
『パパ 人気者だからな…』
『お父さんも かしゃまちゅ しぇんしゅ‼︎って
握手してるねぇ』
流石元MVP選手 先輩だって女子人気高いくせに
『あたしも おっきくなったら
名前よばれるようになるんだ』
『…別に無理してならなくて良いんだぞ⁇』
先輩の複雑そうな声に俺の顔が緩む
『好きだなって思える事を
一生懸命出来る人になるんだぞ⁇』
『⁇ はぁい』
可愛いく首を傾げた所で動画は終わった
「…先輩
この動画今すぐ俺の携帯に送って下さい」
「…ん」
俺に宛てて送ってくれようとしてる先輩を
横からギュッと抱き締めた
「黄瀬⁇」
「今日の疲れを取ってるっス…」
「…そ」
ああ… 俺幸せだな…
「…ねぇ 先輩」
「ん⁇」
「女の子は いつか
お嫁さんに行っちゃうじゃないっスか⁇」
「…俺 男だけど お前の嫁になってるけどな」
「先輩は特別っス‼︎
だから俺
笠松先輩似の男の子も欲しいんスけど…」
その台詞を聞いて先輩の眉根がピクッと動いたが
俺は恐る恐る続けた
「来週の旅行で頑張っちゃいません⁇」
「…………」
先輩はジロッと俺の方を見て
やっぱりダメか…と肩を落とした
「…考えとく」
先輩の言葉にパァーっと俺の気持ちが晴れていく
「先輩大好きっス‼︎」
「はいはい 俺もだよ」
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