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再試のために
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「透、おはよう。」
いつもの曲がり角で君と出会う。
「あ、おは、よう。」
恥ずかしさで、顔から火が出そうだ。そんな俺を見て、セツは笑いながら言う。
「透、変。」
「だって――」
「だって?」
君の顔が近づく。ああもうダメだ。恥ずかしい。
思わず一歩下がって君と距離をつくる。それでも迫ってくる君。俺は諦めて口を開く。
「ドキドキしすぎて、セツを見れない。」
ほら、固まった。
だから、黙っていたかったのに。セツが態度で急かすから。
「何それ。」
それは、固まった彼から出た一言だった。
「梅村君、可愛い。」
ジリジリと異常に近づいてくる。
「ちょっ! セツ!」
キスをしようと顔を近づけるセツに戸惑いながらも目を閉じる。
あれ?
待っても唇に何も触れてこない。こっそり片目を開けて見る。
「うわ! 河崎!!」
そこには、セツの顔を手でぐいっと俺から引き離している河崎の姿があった。セツは、口と鼻が彼の手によって塞がれているため苦しそうにもがく。
「あ!」俺の腰に回していた手を離して、河崎の手を思いっきり剥ぎ取る。
「河崎、てめぇ!!」
眉間に皺を寄せる河崎。
「怒りたいのは俺の方だ。朝っぱらからイチャつきを見せ付けられる俺の身にもなれよ。」
大きくため息を吐き出して、やれやれという表情だった。
河崎はセツに失恋した。だけれども、「友達でいて欲しい」と言った彼は、俺たちと以前のようにななんら変わらない友達でいてくれる。最初はちょっと疑ったりもしたが、何もしない。そして、俺とも友達でいてくれている事に安堵している。
「ところで、お前ら。」
俺たち二人を見て河崎はにっこりと言う。
「俺に助っ人頼んだからには、明日の再試でいい点採れよ?」
そう、明日は再試の日だ。
夏休みが始まってからずっと補修を受けてきた俺達だがすぐに更生できるわけではなく。二人で勉強会をしてみれば、各々補修の内容を理解できていなかったことに気づくばかりで身にならなかった。
再試前日は、生徒に復習をさせるため補修が休みになる。その日を狙って、俺達二人は河崎に勉強を教えてもらえるように頼み込んだのだ。呆れたような目で、河崎は了承してくれて今に至る。
「じゃ、俺の家に行くぞ。」
河崎が先頭を切る。
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