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遅刻の理由ー2
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そういえば、とふと昔を思い出す。
あいつも、確かいつも八時〜八時半の間に起きて、遅刻常習犯だった。
いつも俺が起こしに行ってたんだった。
あいつはーーーーー
「…ねぇ、」
「へっ?」
どこかへ飛んでいた意識が雪城の声で呼び戻される。
「さっきからずっと呼んでるんだけど。次は」
「あっ、ごめん。次は…」
危ない。
今朝、あいつの夢を見たせいでなんかあいつのことを思い出してしまう。
「家から学校まで何分かかりますか?」
「んあー…20分くらい」
ちらりと、雪城を見る。
退屈そうに手遊びをしている。
色の白くて、すべすべしてて…細くて長い指。
視線を上げ、顔を見ると伏せた目に長いまつ毛が影を落としていた。
本当に綺麗な顔。
よく見るとあいつにそっくりだ。
「おい」
「…っ」
じつと見ていたら、雪城と目が合った。
「さっきから何。質問する気あるの?」
「本当だよー、雪城クン見つめるくらいなら俺を見てよ」
さっきまで真面目に書類を書いていた風祭が、本気か冗談かわからないことを言ってくる。
…ここはスルーしよう。
「次…実家通いですか?」
俺が風祭を無視して次の質問をすると、雪城はあからさまに嫌な顔をした。
そして少し間があってから、
「…違う」
と答えた。
なんだ今の間は?
なにか聞かれてまずいことてもあったのだろうか。
知りたいが、こういうのは出会って間もない俺がきくようなことじゃない。
そう思い、次の質問へと進む。
「次、遅刻の主な原因は?」
「…朝、起きれない」
「お前…朝起きれないって…小学生じゃないんだから…」
「起きれないものは起きれないんだって…」
ぷいっとそっぽを向く。
まじで小学生…。
しょーもない理由に呆れ、ため息をつき、
「俺が朝、起こしてやろうか?」
と提案してみた。
だって、そうしたほうが俺にも、雪城にもいい。
俺はそういう義務があれば今日みたいに遅刻なんてしないし、雪城だって起きれば遅刻することはないのだろう。
「はぁ?」
目の前の遅刻常習犯は、信じられないと驚いて目を見開いていた。
「いや、いいって。別にそんなことしなくて」
「俺がしたいの」
「まじやめて」
困ったような、あと一歩で泣き出しそうな顔をする雪城。
なんつー顔してんだよ、こいつ。
そんなに嫌なのか?
と、少しそのふわふわの猫っ毛を撫でたくなる。
腕を伸ばしたくなる。
「だめだ。決定事項だ。いいな」
「まじで…」
腕を組んで、絶対この意見は変えまいと雪城を睨む。
いいよな、と風祭にきくとあっさりOKしてくれた。
「じゃあ、俺もして?」とかなんとか言ってきたが、それにはNOと答えておいた。
まぁ、これで遅刻も減るし、雪城の留年も防げる。
なんだかそう考えると少し嬉しい自分がいた。
「……どうなっても、知らねぇ…」
ぼそりと、雪城が言った言葉も聞かずに俺は浮かれていた。
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