アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
プレイボーイー3
-
「で、この件についてなんですが、それについては3ページ目の資料と文章を見ていただきたいんですけど…」
なんだこいつ。
「…………」
「あ、はい。そうです、その資料になりますね」
ちらっと隣にいる風祭を見る。
こいつは、今まで数回しか生徒会に顔を出してないくせに、さっき少し見せただけの企画をスラスラと説明している。
まじでなんだこいつ…。
相手校の生徒からの質問にも素早く答えられてるし、資料の使い方もうまい。
むしろ俺がいらなかったんじゃないのか…。
「なに?」
「へ?」
俺の視線に気付いた風祭が俺を見る。
「ずっと見てるよね」
「あー、いや、お前ほんとにすごいなって」
素直にそのまま告げると、
「…そ、そういうのほんとやめて…」
風祭はまた顔を赤くした。
「なんで。いいことだろ」
「いや、照れるから、ほんとさ」
恥ずかしいのか手の甲で口元を隠す。
照れるって、こいつにもそんな感情あるんだ。
こいつただのプレイボーイなダメな奴だと思ってたけど、なんだかんだ可愛いとこあるんだなぁ…。
「あの、風祭さん、ここなんですけど…」
「あ、はい!」
そんな風祭は資料に目を通していた生徒に呼ばれ席を立った。
笑顔で説明している姿を見て、やっぱり風祭はいい奴なんだよなぁ、と改めて思う。
そう思えるとなんだか風祭と仕事をするのが楽しく思えてきた。
交渉を終え、その報告をしに一旦学校へ戻ることにした。
「やっぱお前すごいよ」
帰る途中、風祭にそう話しかける。
「いや、だから…やめて、照れるから」
「嬉しいだろ?」
みるみるうちに顔が真っ赤なりんごみたいになる風祭。
「そりゃあ…それなりに、ね」
人差し指で頬をかく。
照れた時の癖だろうか…?
「あー、なんか人にちゃんと実力見てもらえるってこんなに嬉しいのかー…」
「どういうことだよ、それ?」
「いや、俺さ、中学の時こんなんじゃなかったからさー…」
語尾が寂しそうに聞こえて、ふと足元を見ていた視線を隣の風祭に移す。
そんな風祭は前を見たままで、微笑んでいた。
「俺、ほんとちゃらちゃらしてたし…」
それは今もだろ、と突っ込みたくなったがそれを抑える。
「成績良くても、行動とかで勝手にイメージ作られて、やりたいことやらしてくれなかった。…まぁ、自分も悪いんだけど」
「まぁ、それはあるな」
「あ、そこはちょっとフォロー入れて欲しかったなぁー」
ふふって軽く笑った風祭の顔は夕日でキラキラしていた。
いつも以上に、かっこよかった。
「誰も俺の実力見てくれないし、悔しかったから、ちゃんと一回真剣に行事の実行委員とかしてみたんだ」
風祭が軽く目を閉じる。
あぁ、そっか。
こいつは。
でもね、と風祭が続ける。
「確かに、みんなすごいねって言った。それからみんながたくさん仲良くしてくれた。だけど、それって最初から俺の悪口とか言ってた奴もなんだ」
「……」
「ちょっと、ムカついた。お前、最初全然俺のこと気にもしてなかったのに、って」
こいつは、
「俺は、最初っからちゃんと俺のこと理解してくれて、信じてくれる人が欲しかったんだけどなぁ……」
ただ、ちゃんと自分を見て欲しかっただけだ。
表面じゃなくて、
見せてない内面も。
「だから、褒められるとか、知り合って間もない君にそんなこと言われると思ってなかったから、嬉しかった」
と、最後まで言い切ると前からぱっとこちらを見てきて、見たことない笑顔で笑った。
ちゃんと嬉しそうな顔。
そんな顔を見て俺は自然に微笑んでいた。
そんな俺を見て更ににっと子供っぽく笑う風祭。
「君に会えてよかったー」
「そう思うなら、ちゃんと生徒会来いよ」
「え」
「“え”じゃねえよ。なんで今の流れで来ないんだ」
「うぇ〜、まじで…?」
「まじ」
そう言うとまた嫌な顔をしてから、あ、と目を輝かせる。
なんだよ、こいつ…忙しい奴だな…。
「じゃあ、君の側で出来るならいいよ」
「は?」
「え、だめ?」
「いや、いいけど…」
やったー!と急に走り出す風祭。
ちょっ、え、?
「おい!走るな!俺は運動できないんだ!!」
「早く早く!」
「待てって!」
「はーるちゃーん!早く!」
カラカラと笑いながら猛スピードで走って行く。
その差、300m。
いや、それよりも。
春ちゃんってなんだよ!?
いや、“ちゃん”付けはまじでやめてほしい。
ただでさえ女顔なのに。
でもまぁ、
「俺に懐いてくれてるのか…?」
そう思うと、また笑ってしまった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
35 / 334