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欠席ー1
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「けほっ、……はぁ」
これは昨日見た夢のせいだ。
あいつのせいだ。
“春ちゃーん!”と幻聴まで聴こえる。
「…くっそ…げほっ」
気まずくてもいいから…今すぐにそのやけに整った顔面を殴ってやりたい。
いつの間にか昨日眠っていた俺は、布団も被らず寝たせいか、翌朝風邪をひいた。
「体温計…どこだ…」
ふらふらと熱を帯びている体で制服からスウェットに着替え、階段を降りてリビングへと向かう。
「あれ…春樹、学校は?」
「風邪ひいた…はぁ、」
母親が俺のスウェット姿を見てきいてきた。
俺は答えてから台所の棚から薬箱を取り出し、解熱剤を探す。
「おはよ…て、兄さん学校サボり?」
ガチャ、と音がして弟が制服姿でリビングに入ってきた。
母親と同じように俺の服装を見て言ってきたが、また答えるのも面倒くさくて答えずに薬を探した。
「風邪か…、解熱剤、ここ」
「うっわ、」
夢中で探していると、いつの間にか隣に来ていた弟が冷えた手で俺のおでこに触れた。
そして薬箱を漁って、解熱剤のパッケージを見つけ出した。
「あ、さんきゅ」
「ん、」
礼を言うと、弟ーーー真冬は小さく返事をしてからふらっと台所を出て行った。
薬を取り出しながら、リビングで朝ご飯を食べている真冬を見る。
「ど?おいし?」
「…うん、美味しい」
正面の母親に、にこにこされながら話しかけられる彼は全くの無表情で黙々と食べている。
なんと言うか、真冬は変わっているというか。
ぼーっとしてるのか、考え事してるのかよくわからない。
そう、兄である俺でもよくわからない。
わかることといえば、
俺とは違って、イケメンであること。
女顔なんて俺だけだ。
真冬は顔が整ってて綺麗で、雪みたいな肌をしてる。
背も、3歳も違うのにだいぶ前に抜かされている。
心底羨ましい。
「じゃあ、僕行ってくる」
「いってらっしゃーい♪」
歯磨きを終え、コートと鞄を取りリビングを出て行く真冬を母親はまだにこにこしながら見送っていた。
「はぁ…今日も真冬くん、イケメンだわ…」
あぁ、母親のことを付け足して言うのを忘れていた。
この人は恐ろしいほどの真冬のファンだ。
「はいはい…」
今日はそんな母親を見て笑うこともできず、薬を飲んで二階の自室へと戻った。
バタンと扉を閉め、ベッドに横になる。
今更だが、飲み物とか、濡れた布とか持ってくるの忘れた…。
でも、こんな状態でもう一度下に降りるのは辛い。
「いいか、別に…」
そう思って目を閉じた。
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