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小さな願いー2
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「痛い…って!聞いてるのか!?」
「うるさい…」
完璧に俺の意思は無視で、雪城はずんずんと進んで行く。
こいつ、急にどうしたんだろう?
さっきまで一言も言葉を交わしていなかったというのに。
相変わらず無表情だから、全くこいつの考えていることがわからない。
「お前、ほんとなんなの…」
「は?」
「お前、どれだけの人を傷つければ気がすむの…」
「え…」
ぼそりぼそりと、前から小さな呟きが聞こえる。
「俺だけでいいじゃん…なんで…他の奴まで…」
震える声。
ぎゅっと俺の手首を掴む手。
白くて、華奢なのにとても力強い。
「どういう意味だよ、それ?」
さっきから意味のわからない言葉ばかり呟く雪城。
「本当にお前は馬鹿だ…」
「え…うわっ…、?!」
突然、ぐいっと引っ張られ、真っ暗な場所へ引き込まれる。
ガラガラ。
カチッ。
ドアを閉める音と、鍵をかける音。
どうやら俺は空き教室に連れ込まれたらしい。
暗闇に目が慣れてきて、目の前の奴の顔がはっきりとし始める。
「なんでこんなとこに…」
じりじりと無表情で迫ってくる雪城に俺は後ずさりしながら部屋の奥へと逃げる。
「本当にわからないの?なにも?」
「だから…っ、何がだよ、さっきから…」
トン、と遂に再奥まで来てしまったのか壁に背中が触れた。
トクトクと心臓の鼓動を刻むスピードが上がる。
「覚えてない?俺のこと」
「は?」
本気でなにを言ってるかわからなくて、俺は人生で一番使い方がうまかった“は?”という疑問の言葉を出した。
本当に訳がわからない。
雪城とは高校に入ってから初めて会ったはずだ。
雪城なんて珍しい名前を俺は会ったら忘れるはずがない。
「いや、お前とは高校に入ってから初めて会っただろ…」
冷たい目で俺を見下ろす雪城に、心が折れそうになるがなんとか言葉を紡いで返す。
すると、雪城はトンと壁に手をつき、俺の足の間に片方の足を入れ込んできた。
それによって更に雪城との距離が近くなる。
「な、…」
「答えはイエスしか聞きたくない…」
あまりの眼光の強さに俺は背筋を凍らせる。
イエスもなにも、質問も訳がわからないし、答えようがない。
だから、
「いや、訳わかーーーんっ!?」
訳がわからないって、言おうとしたのに。
気づいたら、俺と雪城の距離はもう無くて。
「んんっ…ふ…ぁ…」
「ん…」
ちゅ、とリップ音が鳴ってから唇を離すと、形のいいそこから懐かしい名前が出てきた。
「春くん、僕だよ、マキだよ」
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