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体育祭in西宮高校ー5
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びっくりした。
「え、…」
『一位は入学したての一年生!』
御子柴が何かで一位じゃないのを初めて見た。
「あっちぃ、ただいま〜」
お疲れ様です、そんな声も驚きのあまり俺には聞こえない。
開いた口がふさがらない。
「おい?新庄?」
「え、あ、…!お疲れ」
「おう」
にっこり笑ってぐしゃぐしゃ俺の頭を撫でる。
俺は仕事を終えてから生徒会用のテントに戻り、競技を観戦していたのだが。
御子柴が一位にはならなかった。
代わりに一位になったのは、一年生。
なんか名前が…難しかったような。
とにかくその一位の子の名前さえ覚えられなかったほど驚いた。
「あの一年、速かったなぁ」
タオルで汗を拭きながら言う御子柴。
御子柴しか見てなくて一位の子なんて見てなかった、とは言わないでおこう。
「一年って…まぁ、バスケ部じゃぁなぁー。おじさん無理だなぁー」
今度はぱたぱたと手で仰ぐ仕草をする。
「て、いつまで驚いてるんだよ」
「いたっ…」
べしっと手のひらで額を叩かれる。
「いや、お前が一位じゃないとこ初めて見た…から」
「いやいや、俺はそこまで出来た人間じゃないぞ?」
ヒリヒリする額を手で覆いながら言うと、御子柴は苦笑した。
いや、本当に俺は見たことがないんだって。
「上には上がいるんだよ」
「そうかぁ…」
ははっと軽く笑い飛ばす御子柴になんだか俺は一位じゃなかったのが悔しくて納得できなかった。
「つーか、そいつの名前、なんだったか…難しー名前だったな…」
「悪い、俺も聞いてなかった」
「いんや、いいけど…あー、なんかムズムズするな」
「そうだ、招集の紙に載ってるんじゃないのか?」
そう言って、先ほど一緒に招集した役員に紙をもらう。
「えーと…1500m走…一年…あ、こいつか?」
と、御子柴が見つけてそれを指差す。
「なんだ、これ…?なんて読むんだ…?」
「え、あ…これ、古典で出てきた…確か、えぼし…烏帽子、流、星…」
ふと、なにかが頭をよぎった。
烏帽子 流星…?
なにかが、引っかかる。
「待て…烏帽子 流星って、…まさか…」
俺より、年下で、バスケ部で…。
名前が、流星…。
「リュウ…?」
「あ、呼びました?春樹さん」
背後から聞き慣れた声が聞こえて、俺は勢いよく振り向く。
「やっと見つけた〜!」
「ちょ、うわっ」
しっかりと顔を見る暇もなくガバッと抱きつかれる。
けれど、顔を見なくても視界に入るその印象の強い夕焼けのような髪が、こいつがリュウだということを肯定していた。
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