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表裏一体ノ人格。
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(宵side)
いや、うん。
確かに伊吹だった。
俺の目を抉ろうとした、あの。
全体的に薄い色素。
緩やかなウェーブを描いた肩上くらいまでの癖のある髪。
まあ、大蛇と似たようなもんだけど、伊吹のそれはパーマって感じで、大蛇の方はボサボサって感じ。
首に巻かれたマフラー。
青みを帯びた着物。
確かに、伊吹、のはずなんだけど。
なんというか、こう。
雰囲気が違う。
「・・・君たち」
「ひっ!いや、あの!凄い吹雪なんでちょっとの間だけここに居させてもらえないかな~みたいな!」
俺はあたふたしながら必死に訴える。
相手は俺を殺そうとした相手だ。
・・・ん?
でも今は殺気が・・・。
霊帯になってからというもの殺気にやたら反応するようになってしまっている。
一種の自衛なんだろうが。
「・・・」
「ひっ」
冷たい眼差しでジットリと見られて、俺の背筋が凍る。
・・・雪男だけに・・・?
あっはいすみません。
「・・・別にいいけど」
「・・・?」
やっぱりおかしい。
この人、全然違う人みたいだ。
「煩く(うるさく)しないでよ・・・」
なんというか、緩慢としている。
全体的に。
さっきみたいな刺々しさがない。
話口調も違うし。
俺たちにも関心がないみたいだし。
「・・・」
無表情な一瞥(いちべつ)。
「あ、あの!!伊吹、さんですよね・・・?」
「だったら何」
その瞬間、俺の隣を青い炎が駆け抜けていった。
伊吹に向かって。
フッ、とその空間に大きな雪の結晶のような盾が現れて、その炎を止める。
氷の盾はそのまま炎と共に融ける。
融けた雪で岩の床がジワリと塗れている。
あの紅葉の炎にとっさに反応できるのも、炎を受け止めるのも。
どっちも凄いことだ。俺には分かる。
だけど、なんというか。
相変わらず表情の顔で、技を撃った張本人である紅葉をジットリと見る。
「・・・お前、本当に伊吹か。ちょっと弱すぎんじゃねえか」
紅葉は座って手だけ突き出した姿勢のまま―炎を打ち出した姿勢のままで言う。
そう、なんというか。
覇気がない。
さっきまでの吹雪が如く荒々しさや厳しさじゃなくて。
それこそ消えていきそうな雪みたいで。
さっきが動なら今は静。
さっきが陽なら今は陰。
さっきが乱なら今は無。
「今はやる気がないんだよ・・・いいから放っておいて」
「やる気っていうより、人格がなあ」
尾咲もようやく言葉を発した。
本当に、誰だよっていうくらい別人だ。
別、人・・・?
「・・・もしかして、二重人格的な・・・?」
俺の言葉に、紅葉と尾咲がハッとする。
「・・・」
眠そうに半分閉じられた目をして、伊吹は何も言わない。
「お前、能力だけじゃなくて、性格も変わるのかよ・・・」
これが、能力と性格に二面性のある雪男、伊吹との出会いだった。
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