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可能性ノ話。
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(宵side)
「宵、起きろ」
ペシリと頬を叩かれ、俺は薄く瞼を開く。
その横暴さに色々浮かぶ顔はあるが。
「・・・こうよ・・・?」
のそのそと身体を起こすと、ニヤニヤとした笑みを浮かべ、すぐ傍でしゃがみこんでいる人物と目があった。
「残念、俺でした」
<***>
(緋酔side)
ビクッと身体を震わせて布団を抱きしめる姿を見て、何とも言えない気持ちになった。
「な、な、なんでお前がここに・・・」
確かにここはお前と狐の住処だが。
そんなに怯えることないだろ、と小動物のように身を縮める相手を見て目を細める。
そんな俺を見て、また更に身を縮める人間に、思わず笑ってしまった。
「オラ、外に出ろ。直々に俺が霊帯の伊呂波(いろは)を教えてやるんだから」
その一言に、ピク、と表情を変える。
本当によく表情の変わることだ。
そういえばこうして他人の居るところに降りてきたのは久し振りかもしれないな。
煙に覆われていない青い空を見上げて。
俺は僅かに笑ってしまった。
<***>
(宵side)
朝起きると師匠である紅葉はいなくて、代わりに昨日出会った緋酔がいた。
不法侵入かと思えばどうやら違うらしい。
まあ尾咲曰く過保護(俺はそうは思いません!!)な紅葉がそんなヘマはしないだろうけど。
でも身体を煙にできるんならドアとか意味ないよな。
3mmあったら入室できるとかゴキブリかよ。
とか思ってたら頭を殴られた。
ポカリと。
距離は離れてたのにどうやったんだろうと思ったけど、自分の腕を切り離すみたいにして俺のところまで瞬間移動させてたっぽい。
チートかよ。
っていうか心を読むな。
そんな緋酔が言うには、俺に霊帯者として話をしてくれるらしい。
慌てて外に出ると、既に緋酔は外で空を見上げて立っていた。
その顔が少し穏やかで、俺は一歩近づく。
その瞬間振り返った視線と視線が交わる。
緋酔は顎でこっちをしゃくって歩き出した。
対面すると、改めてその容姿の整いように気付く。
俺の周囲には美形しか集まらないのか。
ある意味呪いだな。
か、類は友を呼ぶっていうアレかな!!!!????
また頭殴られた。
なんでだ。
泣いちゃうぞ。
俺が泣いたら紅葉か尾咲が来てお前なんかぶん殴って・・・いやそれもないか。
アイツらむしろ煽ってきそうですらある。
「ガン飛ばしてんじゃねえぞ。ホラ、こっち」
「あっ」
呼ばれて、急いで駆け寄る。
「いいか、霊帯っていうのは『生まれつき妖力を持たない』っていうことだ。つまり努力次第で妖力の習得は可能っていう意味でもある。足の遅い奴が鍛錬で脚力を得るように、頭の弱い奴が勉学に励んで利口になるように。俺たちは不足を補うことができる」
「な、なるほど・・・」
確かに霊力を持つことができないっていうわけではないもんな。
「そこでだ。俺たち霊帯にはいくつかの手段がある。一つは妖力を作ること。これは俺みたいに種族が妖怪異であれば努力次第・・・あとはセンスで可能だ。俺は煙々羅という種族の特性から煙を操る。だが、お前は元来が人間だ。皆無に有は生めない。炎から水は作れないように」
没案らしい。
人間だもの。
「で、もう一つ。それは霊帯者にしかできない」
「それは・・・」
ゴクリ。
あ、お腹すいてきた。
こんなこと考えたらまた頭殴られそうだな。
「それは、体内にある『霊帯の霊力』を操ること」
「そんなこと出来んの!?」
なんとなくこの霊帯の霊力って自分の物っていうよりレンタル品というか、自分に所有権というか使用権がないもののように感じていたけど。
「まあな。並の努力じゃ出来ないが。何故なら『霊帯の霊力』と『本人の潜在的特殊能力』は全くの別モノだからだ」
突然の説明回で、ちょっと混乱してきた俺(と恐らく読者様)を見て、緋酔は、少し考えてから
「えぇと、前に『現』で見たジドウシャみたいなモンだ。アレは『がそりん』というものを入れないと動かないだろ。『潜在的異力』が『がそりん』だとすると、『霊帯の霊力』は霊帯本人からすればただの水ってわけだ」
うーん、水じゃ確かに走れないわな。
っていうかこのイケメン(溜息)、人間界に来たことあるんだな。
うわーイケメン滅べ。
いや、意外と煙化して姿が見られないようにしてたりして。
「でも、水をガソリンになんて・・・」
「それをするために、『変換の鍛錬』をするんだ」
そこまで話して、やっと緋酔は息をついた。
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