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18歳以上ですか?
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嗅ギトッタ物。
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(宵side)
尾咲と斑は同一人物(ニャン物?)だけど、まるで別人だ。
二重人格であり完全に心が乖離(かいり)している伊吹とはまた違う人格性。
二足歩行の猫である『斑』は妖怪っぽいし精神年齢も高い。
化け猫のボスって感じがする。貫禄があるっていうのかな、ああいうの。
声がガラガラで猫っぽくて、でも血生臭い感じがする。
でも人間みたいな見た目の『尾咲』は見た目相応って感じで若いと思う。
ちなみに18~20歳前半くらいに見える。
まあ俺の目もあんまり信用ならないけど。
まあ、だからかもしれないんだけど、尾咲は俺の妖界(コッチ)での知り合いの中でも一番近しいというか、有り体に言えば兄のように思っているワケで。
だから。
<***>
「分かってんのか宵。まだ修行中なんだから勝手に外出るな」
「はい・・・」
正座で師匠のありがたいお説教を聞く。
足痺れてきた。
基本的に怒っている人に対するマインドの持ち方は
『ああ、冷静さを失ってるな~、怒ってるな~』って心の中で冷静に客観視することらしい。
まあこの件に関しては結構俺の自業自得の面もあるんだけどな←
そういえば、前に緋酔に修行を見てもらったけど、森に入ってからの記憶があんまりない。
緋酔に訊けば、途中で俺が寝てしまったのだとかどうとか。
そんなに急に俺、寝るような身体状態だったんだろうか。
状態異常【眠り】に入るようなトラップでも踏んだか・・・?
・・・頑張りすぎかな!!!(元気よく)
「ったく。お前は(色んな意味で)狙われやすいんだから・・・」
「よォ、来てやったぞ」
紅葉のお説教が第二ラウンドに入りそうになったところで。
突如部屋に新しくも聴き慣れた声が響く。
「尾咲!じゃあな、紅葉。ちょっと行ってくる」
「あ、コラ、説教の途中だろーが!!」
せわしなく立ち上がって今にも走り出しそうな俺を怒る紅葉。
心が外に出たがっているんだ(タイトル風に)。
「尾咲が居れば狙われねーよ!」
叫ぶようにして反論しつつ、長屋の外に走っていく。
戸の外で尾咲が待っていた。
「へへ、紅葉から逃げちゃった。最近うるさいんだよな、オカンかよ。でも狙われねーし、尾咲いるし!」
へらーっと笑うと尾咲は眉根を下げて笑い、歩き出した。
隣に並んでちょっと歩いていると、突然尾咲は俺の腕を引いて、長屋の間の薄暗い路地に引き込んだ。
<***>
(尾咲side)
最近、あの『喰』とも関わっているらしいこのちっぽけな人間は、やっぱり俺と話をするのが好きなようで、
明日も付き合ってよ、と言われたモンだから、ご丁寧にクソ親切に紅葉の長屋に出向いてやると、どうも説教を食らっていたらしい宵が、嬉しそうに飛び出してきた。
狐野郎の邪魔ができたようで何よりだ。
アイツの悔しそうな顔が浮かぶ。
コイツはよく表情が変わる。
嬉しそうに、楽しそうに、怖そうに、悲しそうに。
俺の隣で俺じゃないやつとの話をする。
臨場感たっぷりに。
ああ、なんだか腹が立つ。
心が焼けるような感覚。
じりじりと焦げ付くような気がする。
長屋の通りを抜ける前に、ぐいっと腕を引き寄せ路地に連れ込んだ。
「っわ、な、何尾咲」
顔を見られたくなくて黙ったまま抱き寄せると
「ん・・・妖力かけてくれんの?」
だとかのたまうから、こっちもモヤモヤしたまま
「・・・まーな」
そう答えてから、首筋から肩口にかけてを小さく噛む。
ああ、この時間だけは。
コイツはここにいる。
「んっ・・・」
相変わらず艶ついた声をあげる宵。
溢れる、霊帯だからなのか、微かに甘い味がする血を呑む。
くぐもった、小さな喘ぐような声を耳元(まあ実際俺の耳は頭の上の方にあるんだけど)で聞きながら、ジュルジュルと音をたてて血を呑みつつ唾液を混ぜる。
猫の嗅覚で感じる俺以外のにおい。
俺以外からの粘着的な情。
いつもの血の味の他に煙臭さを感じて顔をしかめる。
喰のヤローと何かあったのか・・・?
小さく身じろぎするのを、更に抱きしめると、宵は小さく声を上げた。
マーキングでもするかのようにそれを続けてから、音をたてて口を離す。
甘い声を僅かにあげ脱力した線の細い身体を抱きとめ、更に傷口を舐める。
舐めるたびに、小さく
「あ、あ」
と鳴いては、ビクビクと身体を震わせている。
それもやめて、しばらくその温もりを確かめるように抱きしめる。
「・・・なあ、もう」
「いーや、まだだ」
「ん・・・」
多分、逃げようと思えば逃げられるんだろうけど、それをしないのは、純粋な妖力補助だと思っているのか、まさか変なことはしないだろうという信頼からか。
「・・・護ってやる方が襲うとか、考えねーのな」
「へ?なに?」
「・・・いや」
頓狂な声を出す宵には通じないことを悟り、俺はトントンと背を叩いてから宵を離した。
熱が遠のく。
一度離れたらこんなにも遠い。
肩に手を置いて、目が合う姿勢で向き合う。
するとふと気付いた。
「あれ、お前もう傷口塞がったのか?」
首元の噛み傷がもう無くなっていた。
指を這わせても滑らかな肌があるだけで、それにくすぐったそうに声をあげるだけだ。
「ん~、緋酔とか紅葉の修行のおかげかな?あと、尾咲のコレ」
コレ、とはこの行為のことだろうか。
もはや純粋な善意だけではなくなったこの行為を。
へらりと危機感もへったくれもない笑顔を見せるモンだから、モヤモヤを払拭するように強めにもう一度抱きしめて離した。
癒されたい。俺だって。
お前といると心が煩くて敵わない。
お前といるのが辛くて、幸せなのだ。
「・・・どうしたんだよ尾咲」
不思議そうに俺を見上げ、小首を傾げるからモヤモヤがまた増える。
なんと危機感のない。
俺以外にもこんな顔を晒して生きているんだろうな。
そして俺と同じ思いを持つ阿呆が生まれるんだ。
ああ、そうだ。
俺も阿呆な野郎だ。
「しっかりつけとかねーと、襲われるだろ」
「あーそっかありがとう!」
モヤモヤ。
ありがとうなんて、言われる筋合いはないだろうに。
「そーいやさ?何で俺にここまで構ってくれるんだよ」
じっと目を見る。
ああ、この目。
「お前を死なせたくねーから」
その言葉に嬉しそうに笑うのが。
いっそ殺したいくらい愛しい(かなしい)なんて。
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