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兆候ト吹聴。
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「・・・ってことがあってさあ」
「そりゃ・・・風魔って言やぁ、結構な伝説モンだからな」
次の日、また緋酔に修行をつけてもらいながら、俺は昨日の話をした。
緋酔は笑いながら煙管を吸う。
「緋酔も風魔知ってんの?」
「知ってるも何も」
そう言って、緋酔は煙管から口を離して煙を吐いた。
「そもそも、風魔っていうのは『風魔一族』の長の名前だ」
「風魔一族?何ソレ」
「風魔っていうのは鎌鼬によって作られた戦闘集団みてーなもんだよ。傭兵稼業で有名な、超戦闘型妖怪衆だ。基本は雇用系の流浪衆なんだけどな」
傭兵か。
じゃあ何で昨日の風魔は一人だったんだ?
「風魔一族は世襲制で『風魔』の名を受け継いでいく。で、その並外れた戦闘センスから、妖怪―特に裏の方では知らねえ奴はいないくらい有名だったし、実際、揉め事があっても、どちらかが風魔を味方につけていると分かれば、すぐにそのイザコザは収束するってくらい、技能の伴った集団だったんだ」
「でも人嫌いなのかよ?」
その問いに、緋酔は少し黙って、煙を吐いて続けた。
「・・・ああ。特に『今の風魔』、現頭領が酷い人嫌いで厭世家で、人を寄せ付けないことで有名なんだよ」
そう言ってから、吸い終わったらしい煙管を手の中で煙に変えて(!?)消し去ると
「ま、そんな大物にはもう会わねえだろうけどな。そんなことより修行だ修行」
そう言って立ち上がって俺との間に距離を取る。
「あ、そうだ。その前にもう一つ訊きてえんだけど」
俺がそう問うと
「あ?何だ」
そう面倒くさそうに俺を見る緋酔。
「それこそ昨日、山の中で足を切ったんだけど・・・」
でも今日の朝、足を見るともう怪我は『跡形も無く』治ってしまっていた。
消えてしまった、と言うほうが正しいかもしれない。
「・・・ああ、そりゃあ、霊帯の『超回復』だ。やっぱり純正の霊帯となると早そうだな。そうだな・・・見てろ」
そう言うと、緋酔は自分の腕に、煙から実体化した小さな刀の刃を当てた。
「ちょ!!?何して・・・」
言い終わる前に、その傷口が修復されていく。
「・・・まあ、俺の場合多少の自分の妖力と、煙々羅の煙としての特異性も混ざっているが。でも霊帯は、他者から狙われやすいことの引き換えみたいなもんで、個人差はあるが総じて怪我の治りが早い。まあ、早いだけで、不死でも無傷でもないけどな」
ダメージは負う。
蓄積される。
許容量を超えて、治癒力よりダメージが上回れば、簡単に死ぬんだ。
だから無茶はするな。
緋酔にそう、釘を刺された。
「ん・・・分かった」
まあ、今のところは無茶する予定もないしな。
そういえば、まだ妖界に来て間もない頃、尾咲に首の後ろを噛まれたりしたけれど。
あの後紅葉にそれがバレて怒られたりしたわけだが、あの時は噛まれてすぐに治ったりはしていなかった。
妖気が混ざっていたから治りにくかった・・・っていうのもあったりするんだろうけど、多分純粋に。
霊帯としての能力が上がってきているのだろう。
霊帯然と、してきているのかもしれない。
それは喜ぶべきことなんだろうか。
・・・いや。
「ありがとう」
「・・・礼を言う前に構えろ。修行だ」
「はいよ、師匠」
今日も霊力コントロールの修行が行われるのだった。
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