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水滴ト標的。
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さて。
突然だけども、俺と紅葉は今とある田舎道を歩いている。
久し振りに更新したかと思えばこのブッ飛び感。
もはや揺るぎないな。
いっそ潔い。
というか、未だにこの話を見てくれている人はいるのだろうか。
いるならありがとうございます←
とりあえず久し振りついでに状況&あらすじを説明しておこう。
至って普通の男子高校生だった俺は、ある日突然妖怪が視える特異体質になってしまった。
妖怪に襲われているところを助けてくれた妖狐、後の紅葉を師匠とし、俺は霊帯という存在として妖怪の世界で生きていくことを決めたのだった・・・。
で、現在はそこで何やかんやありつつも、他のイケメン妖怪達とも交流を深めていたところで。
猫又の尾咲(斑)とか、化猪の矢来さんとか。
他にも、俺の第二の師匠になった煙々羅の緋酔とか、二重人格の雪男、伊吹とか。
あとは・・・妖蛇の大蛇とかな。
そんな奴らに囲まれてひたすらわちゃわちゃするギャグストーリーだ。今のところ。
メタいのは今更である。
そして今の状態を説明するには、数時間前に遡る必要があった。
<***>
【数時間前 紅葉の長屋】
「稲荷(いなり)の旦那、ちょいと訊きたいんだが」
俺の居候(いそうろう)先である長屋の扉が開いて、知らない人・・・妖怪が入って来た。
見た目は矢来さんタイプだな。
頭に角が生えてて、二足歩行だけど、昔話に出てくる鬼みたいというか。
目は一つで、身体は筋肉質な、何とも形容しがたい風貌の―言ってしまえば、異形の、妖怪だ。
紅葉はこの辺りの顔役らしく、結構客が来ることが多かった。
世間話をしていくものもいれば、こうやって相談に来るものもいる。
ちなみに『稲荷の旦那』っていうのはあだ名みたいなもんで、本名を明かさない妖怪らしいというか、何というか。
尾咲もよそで『猫鬼(びょうき)』とか呼ばれてたりして、結構面白い。
ちなみに猫鬼は畏怖の意味を込めての名前らしい。
緋酔の『喰様』みたいなもんだ。
それで・・・今回のそのお客さんが話したのが
「近頃、この辺りで日照りが続いて作物が実らねえ・・・何かいい方法はねえかなァ?」
とかいうものだった。
正直、作物とか作るってとこに俺は驚いたワケだが。
「フゥム・・・そうだな、少し心当たりがある。少しだけ待っておいてくれるなら、手を貸すことはできるが」
「本当かィ!?さっすがァ、頼りにならァ。急かすわけじゃねえけど、早く解決させておかないと、商品が値上がりしちまわァ」
「それは困る。なるべく早く手を打とう」
そんな会話をして、お客さんはとりあえず帰って行った。
で、回想終わり。
今に至る。
「心当たりって・・・どこに向かってんだよ」
「神様のところ」
「へー、神様・・・かみさま・・・?」
それはGOD的な?
そういう神様?
「ここは妖(あやかし)の世界だぞ・・・?神様くらいいる」
まあ神様も妖怪も似たようなものではあるかもしれないけども・・・。
「・・・で、その神様ってのが雨を降らしてくれるのか」
「著しく機嫌を損ねなきゃな」
「あっ、フラグやめて」
<***>
「雨弦(うげん)の里、という」
「うげんのさと」
「神様が住んでいる場所だ」
そりゃまた・・・水に関連のありそうな。
「そこのトップが神様ってことか」
「まあそうだが・・・今回話をしに行くのはその神様じゃないけどな」
「神様ってそんなにいっぱいいるもんなのか・・・」
「『八百万(やおよろず)の神々』っていうだろ」
言うけど、あれはアニミズム的精神で云々(うんぬん)・・・。
まあ、今更驚きませんよ。
何が来ても。
「雨弦の里の里長、というか主(あるじ)は竜神だぞ。その嫁さんも水神。そんでこれから会いに行くのが雨神だ」
神様が大渋滞してないか、雨弦の里。
っていうかそんな適任の神様に頼みに行くのか。
「まあ、雨弦の里自体は綺麗な場所だからな。あ、だからと言ってちょこまか動き回らないように」
「ガキか」
「俺からすればガキだな」
そうかもしれない。
<***>
「着いたぞ、雨弦の里だ」
ひたすら田んぼに挟まれた田舎道を歩きまくること(体感的には)1時間。
そこに広がっていたのは。
「うわ、すご、えっ・・・」
しとしとと降りしきる雨の中、紫陽花(あじさい)が咲き乱れ、そして天には美しい満月が。
「いやいや雨降ってるのに月出てるっておかしいだろ」
「この里独特の気候変動だよ。まあ、その雨神のせいだけどな」
それって結構凄いお方なのでは。
あ、緊張してきた。
「まあ昔はそれなりにアレだったけどなあ・・・あ、神泉だ。一応参っとくか」
アレってなんだ。
そんな俺(と俺の疑問)を放って、紅葉はガンガン進んでいく。
何というガンガン行こうぜ。
里の敷地内にあった大きくて鏡みたいに綺麗な泉。
これが神様の泉らしい。
「竜神夫婦の神域だ。粗相のないようにな」
「お、おう・・・」
緊張しながら紅葉の後ろをついていく。
そういえば最近は昔みたいに妖力をかけてもらわなくても良くなってきたな。
紅葉と緋酔のおかげか。
「久しいな、九尾・・・今は何と名乗っているんだったか・・・」
「さすが海神(わだつみ)情報が早い・・・今は『紅葉』だ。で、こっちがその命名主の・・・」
「あっ、よ、宵です」
どもりながら、紅葉の前に出ていくと
「よろしくな、宵。俺は竜神、オカミだ。こっちは妻の瑞姫(たまひめ)」
「あらあら・・・貴方があの・・・ふふ、初めまして、瑞姫よ。大したもてなしもできない小さな里だけれど、今日はゆっくりしていってね」
めちゃくちゃ柔和な微笑みである。
しかもめちゃくちゃ
「綺麗だ・・・!!!」
「だろう?」
俺の言葉にオカミ・・・様はニヤリと口角を上げて笑った。
何だかその笑みが世俗的なのに神聖でかっこいい。
「やめとけ、宵。海神の嫁自慢は長いんだから」
「おいおい、たまには良いだろ?もう里衆には聞き飽きられてんだから」
「だからやめろって言ってんだよ・・・まあ確かに綺麗だけどな」
「あらあら・・・ふふ」
瑞姫様は水のように緩やかに流れる長い髪をした綺麗な女性だ。
肌も透き通るみたいで瑞々しい。
所作までとても綺麗で、本当に『姫』って感じ。
で、その旦那である竜神、オカミ様。
(※ちなみにオカミは漢字だと雨冠の下に口を横に三つ並べて書いて(レイと読む)その下に龍と書く。
こういう環境依存文字は文字化けや字が消える系の不具合が生じるためカタカナ表記という何とも言えない大人の事情である。不具合については別作品で前科ありなのである。悲しみ。)
例によってイケメンだ。
金眼で、白髪のサイドだけが龍の髭(ひげ)みたいに長い。
頭には鹿のような形の黒い角が生えている。
神様としての威厳たっぷりなのに、圧以上に人の好さ(よさ)みたいなのがにじみ出ている。
っていうか。
「『海神』って何・・・どういう関係なの・・・」
「ああ、それは俺のあだ名みたいなものだな。俺が宵が言うところの紅葉を『九尾』って呼ぶのと一緒だ。俺との関係は・・・聞いてないのか?それなりに旧知の仲だが」
オカミ様が小首をかしげる。
そんなこと一度も言ってませんでしたが?
俺はジトリと横目で紅葉を睨みつける。
紅葉はそれを見て笑いながら
「いや、お前が珍しく緊張してるもんだからついな・・・!親しみやすくて気心の知れたやつだよ」
そう言った。
「で、何でまたこんな離れ里に来たんだ?」
と、オカミ様。
「ああ、時雨に用があってな。今いるか?」
「時雨か。今朝散歩してたな。というか時雨がここを離れたら、多分雨が止むだろうからな・・・里の中にはいると思うぞ」
「そうだな。よし、宵、行くぞ」
「行くって・・・」
「雨神・・・『時雨(しぐれ)』に会いに行くぞ」
ニコニコと微笑む二人の神様に見送られながら、俺は紅葉と、件(くだん)の神様に会いに行くのだった。
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