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ニ度目ノ青空。
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「・・・か、・・・う、・・・ぶか・・・」
声が聞こえる。
三途の川の奪衣婆が舟渡賃を請求しているんだろうか・・・。
六文っていくらだ・・・。
というか金銭の授受が発生するということは、あの世の貿易も金銭を使っているってことなんだろうか。
お給料とかあったりするのかな。
であれば週休二日制とかではない気がする。
大丈夫だろうか。
あの世は労基守っているんだろうか。
「・・・うぶか、だ・・・いぶ・・・」
そろそろうるさいぞババア・・・。
俺の脳内一人会議を遮るとはなかなかやりおる・・・。
「おい、・・・うぶ・・・だいじょ・・・う、か」
ん・・・?
「おい、だいじょうぶか、起きろ」
「・・・へ?」
俺は目を開いた。
「・・・うわ!!」
そして驚いた。
「おい、大丈夫か・・・?」
「だ、誰だって、目の前に顔面(美人)があったらビックリするわ!!!」
「何のことだ・・・」
俺に声をかけていたのはさっきのあの人だったらしい。
<***>
「お前、なんであんなところに倒れていたんだ」
「それは・・・」
「ま、大方遭難だろうがな」
「・・・その通りです」
まあ遭難して心身ともに疲れてたのもあるし、腹が減ったのもあるし、別の心的ダメージを負ったってのもあるし。
冬じゃなくて良かったな・・・なんて言いながら、俺の前に立っているのは、さっきの美人さん。
もう服は着てるけど。
陰陽服なんだけど。
しかしこの時代にこんな格好して違和感がない辺りが、つか似合ってる辺りがすげえよ。
コスプレ?
セレクトは謎だが似合っているから無問題(もーまんたい)。
「お前、どこから来たんだ」
「この山の近く。地元なんだよ」
「それなら良い。お前はとりあえず家に帰れ」
おや?
遭難の意味は存じていらっしゃるのでしょうか?
「いや、そうしたいのは山々なんですけど。帰り方が分からないんです、だから遭難したんだよ・・・」
「それなら「(グゥウウウ・・・」・・・」
美人の声を俺の腹内のペットが遮る。
どうやら餌が欲しいらしい。
今日だけで出演数が凄いのなんの。
自由研究とかで観察日記つけてやろうかな。
「すみません・・・」
「腹が減っていたのか。だから倒れて・・・成程な・・・」
「あ、だめだ眩暈(めまい)してきた」
「・・・待ってろ」
そういうと美人さんは、すう・・・と目を細めて伏せると、陰陽服の長い袖をひらりとさせながら腕を動かした。
そのまま空を切るように腕を動かすと風が吹き始め、途端に紅葉が集まり始め、紅い風のようになって美人の前に集まった。
「・・・ふっ」
そのまま美人が腕を上にあげると、そこには
「食え」
秋の味覚がたんまりと・・・(調理済み)
<***>
「そんなに慌てて食うと喉を詰まらすぞ」
「あ、やめてフラグ立てないで・・・!」
俺は美人が出した食べ物にかぶりついていた。
人間、あまりにも理解できないことが起こると考えるのをやめるらしい。
思考は止まっているが、食欲と箸は止まらない。
脳内会議ではコスプレマジシャンってことでとりあえず決着つけた。
「美味い・・・!生き返る!!!」
「・・・そうか」
川原で秋の香りと味を存分に楽しむ。
ここまで全身で堪能出来ることって無いんじゃないだろうか。
「紅葉の中でお前が倒れているのを見たときは少し驚いたがな」
「もう意識が持たなくて・・・」
急速に体力が回復していくのを感じる。
RPGとかの聖なる泉とかってこういう感じで回復するんだろうな。
多分今俺、緑色とかのキラキラしてる光に包まれてると思う。
「ありがとうございました、助けてくれて」
そう、俺はこの美人に助けられたらしい。
「たまに出るんだ、こういう奴が」
「そうなんだ・・・」
それは観光地としてはどうなんだろう。
遭難者多発とか笑えない。
「お前を助けたのは気分だけどな」
「え、気分で見捨てられたりすんの・・・?」
「当たり前だろ。迷う奴が悪いんだよ」
「怖え」
が、まあそうだろうな。
山を舐めるから遭難するのだ。
舐めていなくても遭難するんだから。
そうなると山には近付かないのがベストってことになりかねないけれどな。
「お前のことは助けてやったんだから文句言ってんじゃねえよ」
この美人、口が悪い。
見た目は何か「おじゃ」とか語尾に付いてても違和感ない感じなのに。
「まあ、それ食ったら俺が麓まで連れて行ってやるから安心しろ。乗り掛かった舟ってやつだ」
「あ、ありがとうございます」
そして一人称が俺なんだもんな。
男だもん。
「あなたは下りないんですか?」
「俺はここに住んでるようなもんだからな」
「・・・ここに?」
「ここに」
変な人なんだな・・・。
修行の一環ってやつだろか。
・・・マジシャンの?
「早く食え。俺の気分が変わらないうちに」
「あ、うっす・・・!」
俺は危機感を感じて急いで秋の味覚をかきこんだ。
<***>
「ここまでくりゃあもう大丈夫だろ。もう迷うんじゃねえぞ」
美人(♂︎)に連れられ、やっと分かる道に出てきた。
あまりにも深いところまで行ってしまっていたらしく、誰ともすれ違わなかったのがゾッとする。
「分かってます・・・。ありがとうございました」
「いや。気をつけろよ」
「・・・うす」
俺はこうして無事、下山することができたのだった・・・。
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