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絶望ノ登場。
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ヒュウ・・・
「・・・寒」
木枯らしが、いくらか色褪せて(いろあせて)枯れてきている葉を揺らした。
葉が落ちるのは、木を生かすための処世術。
人間的に言えば、黒字解雇らしい。
可哀想に、今日も木という会社の葉という社員がクビを宣告されて路頭に迷っていた。
その切り捨てられたものに象られて(かたどられて)
俺は命を切り捨てられそうになったあの場所に立っている。
俺は偶然にも救われた側なので、たまたま生きているだけだ。
世の中のあらゆることは、人為的に起こされた言動と、そこから発生した偶然によって成り立っているのだと思う。
その人為的に生かされることもあれば、偶然に殺されることもあるのだから。
怖い話だ。
そんなここが恐らく今回の原因。
ここに来ることで、何かが分かる気がした。
気がしただけなんだけど。
でもここにあるのは。
人為的に作られた何かの悪意と。
偶然に作られた何かの奇跡なのだと。
俺は思う。
<***>
この霊山の入口には霊山らしく鳥居がたっている。
そこをくぐれば霊山の中(?)に入ったことになる。
俺も、前みたいに鳥居をくぐろうとした。
そう、前はただの物としてのゲートだったのに。
鳥居の向こうに頭を持っていった時だった。
「ぐっ!!?」
重い!!
空気が張り詰めて重い、痛い!!!
息ができない!!
吸えない、吐けない!!
キリキリと心臓を締め上げられるような感覚。
「かはっ・・・!!」
息ができないからか酸欠状態のようになって、眩暈がして、意識が遠のいていく。
涙か何かで、目の前が滲んでいく。
ダメだ、死ぬ・・・。
意識が飛んで、景色が真っ暗に堕ちて・・・。
ああ・・・。
<***>
「・・・ん」
目を覚ますと、俺は落ち葉の上に倒れていた。
赤い絨毯ではない。
茶色いシミみたいに広がる絨毯。
「なんで俺・・・・・・・!?」
そこで思い出した。
首に手をかけて思いっきり息を吸い込む。
喉が上下に動く。
空気を嚥下して肺の中から吐瀉する感じ。
ああ、呼吸ができる。
生きている。
「何だったんだよ、一体・・・」
俺はまだ少し痛む頭を押さえながら落ち葉の上に立ち上がった。
あれ・・・こんなの前にも・・・?
その時だった。
「アハハアハハハハハハハアハッハハハハギャハハハハハハハハハハハハッハハハハハアアアアアアアハハハハハハハ!!!!!!!!!!」
「!?」
凄まじい、何かの咆哮にも似た『笑い声』。
地鳴りとともに、凄まじい勢いの風が起こり、枯れた軽い葉を巻き上げていく。
ズウウウウウンンン!!!!!
「何!?」
地震がみたいな衝撃に体が揺れる。
上下に体が跳ねる。
脳ミソまでシェイクされて気持ち悪い。
「キタキタキタキタアアアアアア!!!!!これで俺も俺もオレモオオオオオゥオオオオ!!!!!!!!!!!!!」
狂ったような叫声が耳を劈く(つんざく)。
辛うじて言葉であるらしいことは分かったが、いかんせん獣じみ過ぎている。
理性のない、本能の咆哮(ほうこう)。
目の前にまるで降ってきたかのようにして現れたのは、大きな体と顔の、まるで昔話に出てくるかのような『赤鬼』そのものだった。
降ってきた。
まるで厄災そのもののように。
「なん、だ、コイツ・・・」
指先ひとつ。
金縛りにあったかのように動けなくなっていた。
地面に縫い付けられたかのように、体が動かない。
思考だけが、脳内のリミッターがぶっ壊れたらしく忙しなく巡っている。
逃げなければいけないと、頭では分かっていながらも、体が言うことを聞かない。
足がすくむ。
汗が止まらない。
体中が何かに支配されたかのように、異常をきたし始める。
「シネシネシネシネ死ねええええ!!!!!!!!!!!!!!!」
鬼が狂ったように、黒い何かを振り回し始める。
金棒って奴だろうか。
「鬼に金棒ってか・・・ハハ」
死ぬに決まってんじゃん。
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