アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
戦イノ始マリ。
-
再度刀が振り下ろされるその瞬間、赤鬼が勢いよく背中の美人めがけて金棒を叩きつけた。
凄まじい音がして、パッと赤い紅葉の葉が舞う。
血のように。
紙吹雪のように。
まるでその為の演出かのように。
「・・・あっぶねえなー、自分に向かってそんな勢いよく振り下ろすかよ普通」
間一髪、美人は到底人とは思えない動きで後ろに飛びのいた。
ズズズ・・・と赤鬼が巨体を動かしてほくそ笑む。
「人間が、自分に止まった蚊を思いっ切り叩く(はたく)だろォ・・・?それと同じだよォおおあぁ」
「俺は蚊かよ」
美人が顔を顰めて(しかめて)肩をすくめる。
「ハッ、いいからくたばれよ狐ェエエエエエ!!!!」
地の底から響いてくるようなドロドロとした唸り声が轟く(とどろく)。
その声に俺は絶望と恐怖を覚えた。
「・・・これだから鬼ってやつはおっかねーんだ」
ポツリと美人が呟いた。
その瞬間
ブワァアアアアアッ!!!!
「!?」
風が吹き荒れて、どこからともなく真っ赤な紅葉が舞い上がってきた。
それはまさに。
「・・・紅嵐」
呟くような声だけを残して。
美人の姿はその赤い風に取り込まれたように見えなくなっていた。
だけど、轟々(ごうごう)と唸りうねる風の中から、確かにその声ははっきりと聞こえてくる。
「安直で、周りが見えてねえ・・・。だから守りなんて考えずにただがむしゃらに突っ込んでくる・・・」
鋭い、突き刺すような、刃のような声。
「捨て身ってやつだな、勿体無い。アンタらのその力に、もうちっとでもアタマが付きゃあ、なぁ・・・」
紅い嵐は、そのまま辺り一面を真っ赤に染め上げる。
血のように、火のように。
緋色の風がただただ吹き荒れて。
「まぁそんな状態なのが俺なんだよ、赤鬼」
「グルウゥアウアアァアアアアアア!!!!」
凄まじい咆哮。
逃げたくなる。
足がすくむ。
戦慄く(わななく)身体が命の危機に、ガンガンと警鐘を打ち鳴らしているのを全身で感じる。
「・・・狐畜生に今から倒されんだよ、アンタ」
嵐がおさまってくる。
そして、さっきまで美人がいたところには。
「・・・白狐」
その時点でもう、ソレは妖しいモノであったが、なにより。
その身体には、
真っ白で、銀にさえ見える美しいその体毛と同じ毛色の尾が九つ生えていた。
そしてさっきまで吹き荒れていた紅葉を吸収したかのように、白い身体に鮮やかな緋紅の隈取が浮かび上がったのだ。
・・・妖狐・九尾の狐。
中国神話をルーツに持つ伝説上の生物。
九本の尾を持つ狐の霊獣または妖怪。
「やっぱり、人間じゃなかったんだ。ハハハ・・・」
その姿のあまりの『それらしさ』に笑える。
中学生の「俺が考えるカッコイー妖怪」をそのまま立体物にしたかのようなその見た目。
そう、まるでアニメやマンガのような。
何だコレ。
何だこの妖怪合戦。
俺は・・・どうしちまったんだ・・・。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 68