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笑顔ノ理由。
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「・・・な、お前、名前あんの?」
「俺か?ねえな、狐だし」
俺は狐と並んでから訊いた(きいた)。
彼奴(きゃつ)は歩幅を合わせて歩いてくれないのだ。
彼女であればしこたまタコ殴りの刑ぞ?
で。
名前。
やっぱねえか。
もっぱら狐って呼ばれてたし。
俺の父親は動物に名前を付けない人だったんで、猫は猫、犬は犬って呼ぶ人間だったけども。
でも名無しは呼ぶとき不便だし。
狐、で検索ヒットする多さよ。
「・・・じゃ、俺がつけてやるよ!!」
「は・・・?いや、お前が?」
いいよ・・・。
狐が脱力気味に言う。
失礼な。
俺のネーミングセンスを知らないな・・・?
中学の時からあらゆる名前・・・いや、『魂の名(ソウル・ネーム※発音良く)』を授けてきた俺のネーミングセンスを疑うとは・・・。
「いや、良いの考えてやるって。ええっと」
俺は少し思案してから、パッと顔を上げた。
「狐」
「あのなあ・・・」
まあ、お父さん譲り!(*´∀`*)
彼奴の脱力感がK点突破した。
顔もそうだけど、猫背気味だもん、狐なのに。
「じゃあ無くてもいいじゃねえか」
狐がそう言いながら、煙管を片手でポンポン投げる。
ごもっともだし、今その状態だし。
「えー、じゃあ」
「美人」
「てめえなあ」
狐が一際高く煙管を投げ上げると、それは上空でパッと紅葉に変わった。
「俺ら妖狐が化けた時の容姿なんてもんは、いっくらでも変えられんだ。お前は自分が眼鏡をしているから眼鏡って言われて嬉しいか?髪の毛が長いから長髪って言われて嬉しいのか!?」
何だよ、いいって言ったくせに文句は言うのな。
眼鏡でも長髪でもない俺は考える。
「えーっと・・・てか、どこ向かってんの?」
「どこでもいいだろ、修行なんだから」
いつの間にか日が落ちてきていて、辺りは夕日に包まれていた。
「綺麗だな」
「・・・まあな」
燃えるような紅葉の中で、真っ赤な夕日に包まれて。
風が吹く。
優しく。
狐の長い黒髪を梳いて(すいて)。
紅葉の葉が川を流れるかのように、舞った。
俺は、たたっと狐の前に出て。
そして、狐の肩に乗った紅葉を一つ拾い上げて。
名付ける。
名無しの妖怪に。
「・・・紅葉(コウヨウ)!!紅葉は!?」
「まあ、いいかソレで。これ以上やると酷いことになりそうだ」
その表情は、少しだけ。
気に入ってくれたのなら、嬉しいな。
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