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干渉ト感情。
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「またか、宵」
「・・・紅葉。今日は早かったんだな」
紅葉の家、俺の居候先である長屋の扉を開けた目の前に、紅葉が仁王立ちしていた。
陰陽師服を着た美人が、目の前で仁王立ちしている状態っていうのは、えも言われぬインパクトがある。
ちょっとビックリしたけど、そこから吐き出される声の低さと眼光の鋭さは、何となく想像がついていた。
「尾咲には会うなって、あれほど・・・」
「お、尾咲は良い奴だし!!俺の我儘(わがまま)に付き合ってくれて・・・」
「良い奴が全てお前の味方だとは限らないだろ」
「・・・でも!!」
スン・・・スン・・・。
紅葉が鼻を鳴らし始めた。
そこはやはり狐。
鼻が利くのだろうか。
イヌ科の動物である狐は、犬と同様1000倍から1億倍も優れた嗅覚を持っているそうだけど。
何を、嗅ぎ取って。
何に不快感を感じたのだろう。
「おい・・・宵。こっちに来い」
「嫌だ」
「こっちに来い!」
「っ!」
こんなに怒ってる紅葉、初めて見る・・・。
怒号。
威嚇にすら感じるほどの、怒り。
激高。激昂。
「お前・・・尾咲に何された」
「な、何って・・・」
「何をされた」
「っ、べ、別に・・・妖力かけてもらっただけだよ!」
嘘ではない。
しかしグッと、腕を引っ張られ、予想していなかった方に働いた力に逆らえず俺は紅葉に向かって倒れこむ。
「うぁ!!」
「・・・お前、尾咲に噛まれたのか」
「そ、それは、ッふ、あ」
首の尾咲の噛み痕を指でなぞられて、俺は身体を震わせる。
「尾咲は俺のためにやってくれたんだ!!」
今度は俺が叫んだが。
紅葉には果たして届かなかった。
「・・・抜いてやる。尾咲の唾液も、混ざった血液も」
「ッ!!」
爪を立てられた。
痛い。
尾咲の時はこんなに痛くなかったのに・・・。
「ぁ、ッ触んな!!!」
「!!」
思いっきり、紅葉を突き飛ばした。
「これは、尾咲が俺のためにやってくれたんだ!!紅葉が俺を閉じ込めてる間、独りぼっちな俺のために尾咲が!!」
「宵・・・」
「触んな!尾咲のお守りなんだ!!お前は触んじゃねえ!!!!」
俺は家を飛び出した。
無性に腹が立って。
無性に悲しかった。
違うんだよ、紅葉。
尾咲はそうじゃない。
俺も、そうじゃないんだよ・・・。
夜の妖界を月が儚く照らしていた。
<***>
(紅葉side)
「・・・何してんだろ」
宵が心配だった。
俺が出て、帰ってきたとき。
もしも出迎えてくれなかったら。
お帰りって、言ってくれなかったら・・・?
自分の弟子で、それで面倒事を沢山引き連れてくる。
まだまだ未熟な、人間の霊帯者。
親心にも近いもので接していたと思う。
いや、思っていた。
だけど、あの時。
尾咲の噛み痕を見た時。
ドス黒くて、汚い感情に支配されたのを感じた。
「嫉妬、とか・・・何考えてんだよ、俺・・・」
結果、宵は・・・。
宵は・・・?
「ッ!!あいつ!!!」
俺は宵を追って家を飛び出した。
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