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尾ヲ引ク蟒蛇。
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<***>
ズルリ・・・と長い舌で舌なめずりして、男は屋根の上から妖界を見下ろした。
屋根、として機能しているかは怪しい、崩れた建物の上。
まるで柳のように。
風が吹けば揺れてしまいそうな軽薄さで。
それでいてブレることのない体躯で。
「久し振りに帰ってきたがまぁ、代り映えの無い」
品定めでもするようにあたりを見回せば。
「・・・お?」
片眼鏡が月を反射してキラリと光った。
<***>
(宵side)
「あああ、もう!!あんなに怒んなくてもいいのに!!!」
夜の妖界へ単身、飛び出して、一つ叫ぶ。
こんなのまるで反抗期の家出だ。
まあ、俺には反抗するべき親が反抗するべき時にいなかったから。
実際はこれが人生初の反抗期、のような感じだけれど。
親。
親代わり、か。
紅葉にも腹が立っていたけど、それ以上に喧嘩別れしてしまった俺にも嫌気が差していた。
紅葉が心配してくれているのは分かる、なんとなく。
何だかんだ言って、アレも師匠なんだ。
・・・だけど。
「何も、尾咲まで否定しなくていいだろ・・・」
尾咲は俺のこと護ってくれたし。
色々気にかけてくれてたし。
何となく、兄貴がいたらあんな感じなんだろうか、とか考えるほどには俺自身尾咲に懐いてしまっているんだと思う。
一人っ子な俺からしてみれば、結構兄弟とかは憧れだったりするわけで。
一人っ子で、家族のいなかった俺にとっては。
「・・・」
そっと、首元に手を這わせる。
「ッ」
触れた尾咲の噛み痕がズキズキと痛んだ。
その時だ。
「―――――――」
ああ、そういえば。
紅葉が前に言ってたっけ。
一人で歩き回るなって。
特に、夜は、って。
ああ、もう本当。
俺ってやつはどうしようもないなあ・・・。
<***>
「・・・ン」
身体が痛い。
頭が痛い。
顔をしかめてから、俺は目をうっすら開く。
ここはどこだ・・・?
「・・・やっとお目覚めか」
「!?」
知らない声。
知らない気配。
知らない、空気。
「妖界はどうだい?余所者にはチト辛い場所だろ?」
「・・・お前は、誰だ・・・?」
声だけが聞こえる。
俺を取り囲むような、ねっとりとした様な、そんな。
ククク・・・。
そんな笑い声とともに。
その声の主はその姿を月の下に現した。
「誰だっていいだろ?それとも正体が知りたいか?奇遇だねェ、俺様もなんだよ」
月の下。
影から現れたのは。
「なぁ、ニンゲン」
そう言って。
人間ではない男が姿を現した。
黒、というより緑っぽいぼさぼさの髪に無精髭。
片眼鏡にその下の眼光は鋭く、金色にギラめいている。
その目の周りは少しクマのようなものが出ている。
着ている着流しはだらしなさげに大きく胸元が開いていて、その下にサラシを巻いていた。
そのサラシも左側の腹のあたりが縦に裂けていて、その下にうねうねとした黒い隈取が浮かんでいる。
その隈取はそのまま首元まで上がってきていて、その先の目の端のほうには少しだけ鱗(うろこ)のようなものが浮かんでいた。
ニヤリと意地悪く嗤った(わらった)口の端から赤く、かつ、人よりもずいぶん長い、先のとがった舌が覗いていた。
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