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舌先ノ悪逆。
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「・・・お前、ニンゲンだろ」
「・・・」
睨む。
バレているんだから黙り込む必要は無いし、ここで黙り込むのは肯定の意味になるんだが。
それでもこの男と会話するのは危険だと、脳の奥でそう本能が告げていた。
黙って睨みつけるだけの俺に、目の前の男はニタリと嗤う。
「クカカ・・・そう警戒するな。蛇ってのは嗅覚が優れてるように出来てるんだ」
「・・・蛇・・・?」
・・・確かに蛇は。
鼻以外に口の中にヤコブソン器官という器官があって、そこに匂いを送り込むことで匂いを嗅いでいる。(蛇が舌を出し入れするのはそのためだ)
他にもピット器官っていう、赤外線、つまり体温を感じ取る器官もある種類がいるけど。
ん?W●kipediaかな?
それはそうと。
蛇。
男はまた意地悪く嗤う。
「なんだ、お前何も聞かされてねえんだな。言われなかったか?誰かに」
そして、蛇の様に、スルリと俺に近寄って言った。
「蛇には気を付けろって・・・」
風が吹いていた。
瓦礫の山に。
「ここはどこだ」
「どこだって言われてもなァ。一時的な俺の住処(すみか)としか言えねえなァ」
そこは、言うなれば、そう。
部屋を縦にぶった切った様な、そんな廃屋のような場所。
ぶった切ってるから、普通はあるはずの壁が一面分無くなっていて余りにも開放的な妖界ビューだ。
高い位置にあるのか、外の景色は屋根が続いていて、壁の無いその部屋の向こうには星空が瞬いてる。
俺がいるのは二階に当たるんだろうがそれでもまだ高い。
月が煌々と部屋の中を照らしていて、その青白い光に俺たちは包まれていた。
「それで・・・お前、色んな臭いがすんなァ・・・猫に僅かだが猪に、狐、か」
「・・・」
言葉に少しケンが混ざる。
嫌そうな顔を一瞬浮かべたのが気になった。
鼻を少し鳴らしながら、その男は俺の周りをねっとりと動き回る。
それは確かに蛇を彷彿とさせる動きだった。
幸い(?)俺は蛇が苦手という訳ではなかったけれど、それでもイヌ科の狐やネコ科の猫とはまた違う感じがひしひしと伝わってくる。
有鱗目ヘビ亜目の爬虫類。
小動物や卵を丸呑みする執念深い生き物。
本当に蛇が執念深いのかは知らないが、少なくとも目の前の男は何よりもヘビらしい。
クカカ・・・。
背後に立った男は嗤うと、俺の肩に手を置いた。
そういえば蛇って瞼がない(固着してて動かない)らしいんだけど、今この男は目を閉じている。
人型、なんだろうが。
俺はなるべく平静を保ちながら、視線だけ動かす。
「お前、何でこんなところにいるか分かってるか?」
恐らくお前に拉致られてんだと思うんだけど。
少なくとも俺の意思ではない。
「・・・どういう意味だ」
「そのまんまの意味に決まってんだろ・・・?」
その瞬間。
「!?」
ドッ!!
そんな音とともに、俺の足元から何かが飛び出してきた。
半分崩壊した建物の床を突き破ってきたそれは。
「蛇・・・!?」
蛇。
それも大蛇。
メチャクチャ長いし、太さは大体20cmくらいだろうか。
俺の手に収まらないくらいの太さ。
しかも、一匹じゃない。
それが、俺の腕や足を絡みとった。
「!?ッ」
「お前は、見れば見るほど面白い。臭い(におい)だけじゃない」
「ッ!!」
痛い。
身体が動かない。
生きているはずなのに無機物みたいに。
冷たくて硬い。
まるで鎖のようだった。
「お前の中に、お前のものじゃないモノが流れている」
「ッぐぅ」
俺は恐怖半分痛み半分で、唸る(うなる)くらいしかできない。
「それに、お前の存在自身・・・カカ・・・」
男が俺の身体に触れた。
「ッう」
「狐には名前、猫には唾液。じゃあ俺は身体でも縛ろうかな・・・?」
「・・・!!」
男の手が、スルリと身体を撫でた。
・・・皆も知っている通り。
俺は触られることが苦手だ。
極度のくすぐったがりだから。
変な声が出ることも、自覚済みなんだ。
・・・だから。
「ッふ・・・!!」
キュッと目を強く瞑って、変な声が出ないようにグッと口を閉じたら、空気が漏れて、変な吐息が出た。
「・・・おいおい、まじかよ」
うっすら、涙の膜の張った目を開いて男を睨むと、少し驚いた顔をしていた男と目が合った。
「・・・ふ、ははは・・・!!お前、面白いなァ・・・気に入った」
男が舌なめずりをした。
「俺が、お前を堕としてやる」
その、月を背にした姿は、やけに。
「ッ!」
妖艶だった。
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