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お題「選択肢」
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「君に、選択肢を与えよう」
何かある度、貴方は私にそう仰いました。
その度に私は困った表情を浮かべつつも、貴方が提示する選択肢の中からどちらか一方を選んできました。
えぇ、私が疑問に思わないわけはありません。
勿論、私は貴方に幾度となく尋ねました。
「何故、私に決断を迫るのですか?」
穏やかに微笑んで、貴方は決して答えを私に与えてはくれませんでした。
それを不満に思ったことはありません。
貴方の側にさえ居られればそれで私は幸せなのですから、感謝こそすれ貴方に対して一切の悪感情を持ち得よう筈もないのです。
そして、貴方がくれた残酷な選択肢。
「君に、選択肢を与えよう」
悲しいですね。
あの時、あの瞬間の貴方の顔を私は全く覚えていないのです。
貴方の声すら、揺らいでいる。
記憶とは、本当に曖昧なものなのですね。
「私と共に逝くかい?それとも、一人で生きていくかい?」
貴方と離れ、私が一人で生きていける筈がありません。
貴方と共に、私は貴方と共に居たかった。
貴方と共にある道を、あの時、確かに私は選択したのです。
貴方が私に与えた選択肢。
答えの決まった、選択肢。
貴方は私に薄っぺらな心のこもった紙きれを遺し、一人で勝手に逝ってしまった。
【どうか、一人になっても惑うことなく決断し選択することが出来る自立した人生を歩んでくれることを、祈っている】
貴方が私に与えた選択肢。
貴方を失った私は、それでも日々何事かを決断し、選択して生きています。
貴方が私に与えてくれた、決断する力。
生きることを、貴方に課せられた私はそれでも夢想せずにはいられない。
貴方のもとへ、旅立つことを………
END
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