アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
もう、無理。side凪
-
『僕の家に来ない?』
そう先生に言われたとき、本当はすごく嬉しかった、んだと思う。
先生はいつも優しくて誠実で、一緒に過ごす時間はあったかくて純粋に楽しい。
先生は優しいから、きっと襲われかけた俺を放って置けなくてあんなことを言ってくれたんだろう。
でも急に震えが襲ってきて、もう忘れていたはずの声が耳の奥で蘇った。
『俺の家で一緒に住めばいいじゃん』
そう言ってれ照れたみたいに笑ったもう思い出したくない顔と、その後にされた仕打ちで頭がいっぱいになった。
……もう忘れたはずだったのに。
手を強く握りしめて震えを隠すことで精一杯で、気づけば先生を強い言葉で撥ね付けてしまった。
「無理」って言ったとき、先生はびっくりした顔をしていた。
当たり前だ。
安全な場所を優しくて誠実な人に住まわせてもらえるなんて言われたら、普通の人間はまず喜んで受け入れるだろう。
だけど、断ってしまった。
……あんなに優しくしてくれたのに。
もう店には来てくれないかもしれない。
そうなっても仕方ないほどのことをしてしまった。
こんなことになるんなら連絡先ぐらい聞いとけば良かったな……
後悔してももう遅い。
もともと先生みたいな人は俺とは別の世界の人間だったし。
男で風俗やってるなんていう俺が珍しくて構ってくれてただけで、飽きたらどうせ会いに来てくれなくなる。
だからハマっちゃう前に、今離れた方が後々楽だ。
潮時。
その言葉が頭をよぎった。
………そうやって自分を納得させようとしても、気分はどんどん重く暗くなっていくだけだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
18 / 201