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呪縛。side凪
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馴れ馴れしく近づいたその声に手を無遠慮に掴まれる。
「……っ離せ!」
「あ、おい!待てって……」
思ったより強く掴まれた手に、振り払うタイミングを見失う。
「……何でこっち見ないの」
「……」
ぐい、と乱暴に顎を掴まれ無理やり目を合わせられる。
にや、と口角を上げた顔に寒気がした。
「やっぱナギじゃん」
……志摩 律。
二度と会いたくなかった相手。
目を覗き込まれて、その瞳孔がまともなことを確認する。
苛ついて暴力的になっているようにも見えない。
その事実に、こんな状況でも一安心した。
「そんな警戒心むき出しにすんなって。もークスリはやめたから」
「そんなことどうでもいいから……離せ」
「うっそ!すごい怖がってたくせに?……あーぁ、付き合ってた頃はあんな可愛かったのになぁ?」
……付き合ってた。
その言葉に胸が苦しくなって、鼓動が不規則になる。
嫌だ、もう思い出したくない……!
あんなの付き合ってたなんて言わない。
息が乱れるのを悟られないように必死になっている俺の耳に、ねっとりと律の声が絡みつく。
「なのにナギってば逃げちゃって……なぁまた仲良くしよーよ?……そうだ!これからちょっと付き合ってよ」
「い……やだ!」
「そんなつれないこと言わずにさぁ」
またあの頃みたいに遊んであげてもいいんだよ?
「……!」
吐息と一緒に耳に吹き込まれた言葉に、体が言うことを聞かなくなる。
この声に逆らったら痛くされる。
そう覚え込まされた呪縛で、全身が硬直する。
「そんな緊張しなーい。すぐ着くから、ね?」
にやりと口元に笑みを乗せた律に肩を引き寄せられて、問答無用に引っ張られる。
……逆らえない。
その絶望的な気持ちに目の前が真っ暗になった。
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