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別れの挨拶。side凪
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「はぁ…?おいおいおいおい冗談だよな?」
菓子折りをもって先生と一緒に店に行くと、店長は目に見えて真っ青になった。
「辞める、とか……嘘だよな!?」
顔面蒼白の店長が俺の肩をがしりと掴んで揺さぶる。
「やっ……や、め、…る!!」
舌を噛みそうになりながら答えると、店長はこの世の終わりみたいな顔でがっくりと膝から崩れ落ちた。
「そんな……この店の状態で、ナギが辞める…?じゃあナギの出勤見越して買ったあれは?あの常連のお客は?」
なんてぶつぶつ言っている。
う、…それは俺だって店長には恩があるし、従業員のみんなだって好きだし……
でもあれだけ考えて先生と付き合うって決めたんだから、今更やっぱ辞めないとは言えない。
「ミナトもいるし、別に大丈夫だって!な?」
「ミナト……そうかミナトか」
肩を落とした店長の隣にしゃがんで慰めると、店長がやっと顔を上げた。
その希望を見つけたような顔に、ちょっと興味を引かれる。
「ミナト最近どうなの?指名いっぱい取ってる?」
「あぁ、あいつは凄いぞ!まだ入店してそんな経ってないのに嬢にも負けない稼ぎっぷりだ。……でもナギには及ばねぇよ……あぁあどうすればいいんだ…!」
「……」
テンションの上がり下がりの激しい店長に、思わず冷んやりした目線になる。
隣を見上げると先生もちょっと困った顔をしていた。
いや、この猛獣みたいな顔で嘆く店長の姿を見てちょっと困った顔で済むのはすごい。
「もー店長ー。俺だっていつまでも働けるわけじゃないんだし……むしろ嬢の中ではかなり長く働いたんじゃねーの?」
そう言うと、店長がぐっと言葉に詰まった。
「それは、そうだけど…でも惜しい!ナギという人材が惜しいんだよ!」
だん!と床を拳で叩く店長。
普通に怖い。
「店長!?どうかしました?」
床の揺れる振動に、浅葱さんが部屋に駆け込んでくる。
後ろにはミナトもいて、俺を見つけて呑気に手を振ってきた。
「あっせんぱーい。お久しぶりです。どうかしたんですか?」
「ミナトぉ……」
床に崩れ落ちた店長を指差して涙目でどうにかしてと訴えると、ミナトが軽く目を見開いた。
「うわ、店長?どうしたんですか?」
「…浅葱!ミナト!聞いてくれ!ナギが店辞めるって言うんだよ!!」
「へぇ、先輩卒業するんですか。残念ですねー……あ、もしかしてそちらの方、例の先生ですか?」
店長渾身の訴えをあっさりかわしたミナトが「めっちゃイケメンさんですね〜」と囁いてくる。
うん、知ってるし。先生かっこいいもん。
「ナギくん居なくなっちゃうんですか……寂しくなりますね。長い間お疲れさまでした」
浅葱さんがほろりとしながら手を握ってくれる。
「うん。俺も寂しい……また遊びに来るから」
浅葱さんにはもうほんとにお世話になったな〜……
店に入ったときからいろいろ助けてもらったし……
なんて思い出に浸っていたから、浅葱さんが店長を冷たい目で睨みつけていたことに気づかなかった。
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