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夜中と言える時間帯。既に日付も変わろうとしていた。リビングのソファーでうとうと、としながらも、テレビを見ていると、インターホンが鳴り響いた。
ぱっ、と顔をあげて、玄関へ向かう。
嬉しくて、口許が緩んでしまうのを抑えつつ鍵を開けて、扉の前にたつ彼を目にした。
「おかえりなさい」
「あぁ、」
上品なスーツに身を包み、髪を後ろに流すようにワックスで固めて、正にイケメンと呼べるほどの整った顔はいつも見惚れる。
時々、こうやって彼が残業で帰りが遅くなった時は、会社から近い私の住むアパートに泊まりに来るのだ。
中に入って、作りおいた夕食を二人分温め直す。
「先に食べてなかったのか?」
「一緒に食べたほうが、寂しくないでしょう?」
「……」
十分に温まったのを確認して、彼の前に並べる。
彼は相変わらず、いつも通りに仕事用のPCのキーボードに指を置いたままだ。
「いただきます」
「……」
黙々と、口に夕食を運びながらも、その指は止まらない。
挨拶もあまりない。
これが普通になっていた。
朝になれば、いつの間にか居なくなっている。
「おはよう」も「ただいま」も「いただきます」も、聞くことは滅多にない。
それだけ、忙しい人。
私が食べ終えた頃には、彼もすでに食べ終えていて、仕事を黙々と進めていく。
そういう普通になっていた。
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