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服を脱ぎ、いつものように風呂に入る。
浴槽のお湯に体を浸けて、四肢を投げ出すようにして、タイルの壁に頭を預ける。
今日はもうずっとソファーに座っていただけなのに、妙に疲れがたまっていて、動くのが億劫。
熱いお湯が体を温めて、頭はぼう、っとしてきた。
「──か、はるか!!」
「う、……ん」
ぺちぺち、と頬を控えめに叩かれる。うっすらと目を開けると、彼がいた。
「大丈夫かっ」
「へ……」
膝の裏と背中に彼の腕が回されて、ざばっ、とお湯から体が上がる。
そのままタオルにくるまれて、リビングのソファーを占領して、横にされる。
「はるか……」
彼が、心配そうな顔で私の頭を撫でている。
「ごめん、なさい……」
迷惑かけてしまった。
「あんまりに遅いから……」
「ごめんなさい。迷惑かけて……」
「何言ってるんだ」
「だって、……お仕事……」
彼は暇などないのだから、私なんかで大切な時間を潰させてしまった。
目の奥がじん、と熱くなってくる。
迷惑かけて、嫌われたくない。
「大丈夫、今は少しくらい大丈夫」
「でも……」
「最近、ちゃんと食べてるか?」
「……あんまり」
「俺がいないとき、何食べた?」
「パン……かな」
「どれくらい?」
「……」
「怒らないから、ちゃんと言って」
「……ひとくち、だけ」
「おま、」
「ごめんなさいっ、でも、大丈夫だから。迷惑かけないから。ちょっと、食欲がないだけだから」
何か。何かを言わないと。
「っ!」
す、と目元に彼の指が触れた。
すぐ目の前に、彼の顔が。
「隅がひどい」
なんで、君がそんなに悲しそうな顔をするんだ。
「はるか」
指が離れて、名前を呼ばれる。その顔が、何か嫌なことを物語っている気がする。
何を、言うの。
「少し、距離を置こう」
その言葉は、残酷にも耳によく届いてきた。
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