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文字でびっしり埋まった原稿用紙は、気が付けばテーブルの上に小さな塔を作り上げていた。
ただ自分の今までを書いただけだ。それでも、今まではペンを握っても進まなかったと言うのに、自分のことになると、不思議なことだ。
「……これは、本にしていいんですか? 」
数日後、家を訪れた淡島は、久しぶりにみた私の姿に半分驚きを隠せないような顔をしていたが、原稿用紙の山を見せた途端に顔を変えた。
読み終わったのは、随分と時間がたっていた。
コーヒーを渇いた喉を潤すように口にする。
「……編集長が好きそうな内容ですね」
淡島は、少々呆れたような声で呟いているが、よくわからない。
「編集長にでも、編集部の誰でも読ませればいい」
別に、誰でもいい。
「これは、太宰治のようなものにしてもいいですけど、」
つまりは、オートフィクションのような感じになるんだろう。
「自伝や手記として、出しても……」
「どちらでもいいよ」
今まで暮らさせてもらっていた家庭のこと。高校で彼に一目惚れしたこと。今まで夕食を共にしたこと。
沢山のことが文字として綴られていた。
「では、これは1度編集部に持っていってみますね」
「うん」
「それで」
話が、変わる。
「睡眠も食事も取っていませんよね」
「……」
「これから、病院に行きましょう」
「なんで」
「なんでもくそもありません。編集者として貴方の体調は心配です」
「……」
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