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入院して三日後には、淡島が土産をもって見舞いにやって来た。
「顔色は、多少はよくなりましたね」
「……まぁ、寝たからね」
何度も何かの物音がする度に目が覚めたが、軽くは眠ることができていたのも確かだった。
「こちら、編集部からです」
「ありがとう」
ベタな果物のお見舞。食べれなそうだが。
「それで、この間のですが、編集長に読ませたところ。生き生きとしていましたよ」
「はぁ、」
それは、本にすると言うことなんだろう。
「多少の修正とあと、タイトルですね。原稿をデータにして印刷したので、赤を入れたので、お願いします」
「うん、わかった」
「1週間後にまた来ますね。あ、あと何冊かおすすめの本を持ってきたので」
「ありがとう」
「では」
ベット脇のTVのある棚の上に、分厚い本が5冊、テーブルの上に印刷された原稿が置かれ、淡島忙しそうに帰っていった。
引き出しにしまっていた筆記用具を出すと、隣のベットにいた天江(あまのえ)さんが声をかけて来た。
「さっきの人、同僚の方ですか?」
爽やかな笑顔を浮かべる天江さんは、怪我で足をギブスで固定されている。
「えぇ、まぁそんなところですね」
「編集部がどうって聞いちゃったんですけど、お仕事何されているんですか?」
「私ですか? 私は作家を」
「えー、すごっ。マジですか」
本気で驚いている天江さんに、すこし苦笑い。
ここに、入院してから人と話すようになった気がする。
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