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お昼時。
少しづつ固形食が食べれるようになった。ゆっくりと、少なからず昼食を食べ終えると、計ったかのように淡島が訪ねてきた。
「お久しぶりです、東城先生」
嫌味というように、作り笑いを浮かべて滅多に呼ばない呼び名で私を呼ぶ。
「……久しぶり」
淡島の手には、3つの紙袋が握られている。1つは、見舞い品なのだろう。(綺麗に包装された箱が見える)
「調子はどうですか? 見た目を見た限りでは、活動再開も目の前ですかね」
「そうだね」
「今日は、この雑誌を」
紙袋ではなく、淡島の鞄から出され渡されたのは、昔はよく買っていた文芸誌。
付箋の貼られたページを開けば、「東城悠十」という文字が目につく。
軽く最後まで読めば、最後に可笑しな文章が。
「……インタビュー?」
「はい、つい先日発売されたものなんですが、インタビューの依頼が来ていまして」
「……なんで」
「人気作家の手記ですからね。予定では、来週なのですが」
「どうせ、拒否は出来ないんでしょう」
すでに発売されたものだから、拒否などできるはずがない。
「そうですね。本当はもっと早くに伝えられたら良かったんですが。
それで、出版社まで来てほしいんです」
「それは、許可が必要だと思うけど」
「ですよね」
「……まあ、聞いてみるよ」
「ありがとうございます。それで、此方が」
次に渡されたのは、2つの紙袋。中には、大量の手紙が詰め込まれている。
「HP(ホームページ)で、東城先生の無期限執筆活動停止を発表したのですが、それに対して送られてきたファンレターです。否定的なものは別にしたので無理して読まなくてもいいです」
「そう」
「それでは、外出許可が取れたら連絡を」
淡島はあっさりと、帰っていった。
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