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2日が経った。昨日発売された私の本は、どの番組でも取り上げられていたのをニュースで見た。
ただの手記でここまでとは、なんというか難痒い。
「もしもし? インタビューのことだけど」
病室を出てすぐにある、個室の通話可の狭いなかで淡島に電話をする。
今日の朝、様子を見に来た担当医に外出許可について聞いたところ、あっさりと許可が出た。
そのことを伝えると、淡島の声は少々嬉しそうに聞こえた。
『そうですか、よかったです。では、詳しくは、また明後日にでもそちらに伺います』
「うん、じゃあ」
通話を切り、壁に付けられた手すりに掴まりながら病室に向かった。
「園宮さん」
病室手前で、名前を呼ばれた。
振り返ると、天江さんが松葉杖を両肩に挟み立っていた。
「天江さん、お久しぶりですね」
笑みを浮かべると、天江さんは少し顔を歪めながら頭を下げる。
並んで病室に戻ると、天江さんは私のベットの脇の椅子に腰を下ろして、話し始めた。
「実は、退院が決まったんです」
「そうなんですか? おめでとうございます」
「それで……あの……この間……」
「あぁ、見つけていただき、ありがとうございました。あんなことになっていて、軽蔑したでしょう」
「そんなっ……こと……」
「あ、これ、貰ってくれますか?」
天江さんは言いたいことがあるみたいだが、進みそうにないと思い、話を変える。
本棚にある私の本を一冊渡す。(売り込み←)
「え、これ」
「私の本なんです。退院祝いってことで。」
「じゃ、じゃあ、東城、悠十……?」
「はい」
「!!?」
目が飛び出るんじゃないかというくらい驚きの顔をした天江さん。そんなに驚くものなのだろうか。
「さ、ささ、サインもらっていいですか!!」
「え、いいですけど……」
中表紙にサインペンで書き慣れないサインを書く。
"天江さんへ"というのは忘れずに。
「ありがとうございます」
「その、あまり他人には……」
「大丈夫です。口は固いですから」
いや、固そうには見えない。
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