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インタビュー内容が載せられた文芸誌は、すぐに店頭から売り切れたと淡島から聞いた。また東城悠十のミステリアス感が人気に拍車をかけたらしい。
『to.悠 from.雅斗さん
本件:インタビュー見たよ。』
発売された日の夜には、雅斗さんからメールが届けられた。
少し、にやけが止まらない。
「園宮さん、帰っていたんですね」
病室の外に出て、通話可能スペースで雅斗さんに電話をして、病室に戻ると看護士に声を掛けられる。
「先生が今夜来るらしいですよ」
「わかりました」
からから、と看護士は検査の道具が乗っているカートを押しながら、私の向かいのカーテンを閉められたベットに入っていく。
この間入ってきたのを人は、癌の治療だと聞いた。まだ話をしたのは始めに挨拶をしたときの一度きりだ。
時々苦しそうな表情でカーテンを出てくるときがあって、少し心配だ。
「園宮さん、こんばんは」
看護士の言っていた通りに、夕食を食べたあとに、担当医が訪れた。
「退院のことなんですけどね、この間検査も順調だったので、この調子なら三日後の日曜日に退院ですよ」
退院後は、独り暮らしではなく誰かと当分は暮らすこと。
無理せず、すぐに何かあれば病院を訪ねること。
心配事があれば、なるべく信頼している家族や友人に相談するようにすること。
などなどを簡単に説明されて、担当医は帰っていった。
初めは食事も取れなかったが、今では少なからずしっかり食べている。
初めは薬があっても眠れなかったが、今では薬がなくても睡眠がとれている。
雅斗さんとの仲を戻すことができてよかった。
長いようで短い入院生活だった。
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