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私は今、首が痛くなるほど上を見上げていた。
「悠、いつまで見上げているんだ」
少し先に、雅斗さんが少し笑いながら私を見ている。
私は今日退院した。そして、以前暮らしていた部屋を返し、雅斗さんの住む家に来ている。
雅斗さんが大手の営業をやっていて、お金も余裕にあることは知っていたけど、こんなに凄いところに住んでいるとは思わなかった。
私も多少は売れているが、こんなところにはきっと、いや、絶対住めない。
「ごめんなさい、本当は仕事だったんだよね」
「何てことないよ。むしろ有給取れって前から言われていたんだ」
エントランスを通ってエレベーターで、雅斗さんの部屋のある階に上がる。
着いて、案内された部屋に入れば、驚きの連発。広いリビングやお風呂、寝室。広いベランダもあって、書斎だって大きい。
一つ一つ、丁寧に使い方や場所を教えてくれた。
キッチンやリビングは自由に使っていいが、書斎は勝手に入らないこと。寝室は一緒に。私の仕事場として、広い部屋を空けてくれたらしい。
壁には本棚やクローゼット。ソファや机もあって、ここだけでも生活が十分にできてしまいそうだ。
荷物を整理して落ち着いたのは、夕方だった。
「夕食……」
「今日は疲れただろう。サービスを使おう」
並んでリビングの大きなソファに掛けて、TVを眺める。
ずっと離さずに繋がれた手が温かい。
少し、ぎゅ、と握ってみれば、雅斗さんも握り返してくれて、つい口許が緩んでしまう。
「雅斗さん」
「ん?」
独り言のつもりで出た言葉は、彼の名前で。反応した雅斗さんは、にこりと笑みを浮かべて私を見ている。
「ううん、呼んでみただけ」
「そう、悠、好きだよ」
「っ、」
不意打ちの言葉は甘くて、頭が沸騰しそうだ。
これが、幸せなのだろうか。
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