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観覧車を降りた頃には、閉園時間に迫っていた。手を繋いで遊園地を後にした。
雅斗さんの車に乗って、さっき上から見ていた道を走る。
「夕食どうする?」
「え……あー……冷蔵庫何も入ってない」
元々雅斗さんの家に帰るつもりはなかったから。
時間も家についた頃には、ずいぶん遅くなってしまうだろう。
「じゃあ、ファミレスでも行こうか」
「うん」
車を走らせて、10分ほどして何処にでもあるチェーン店に入る。
「いらっしゃいませ、御二人でよろしいでしょうか」
「はい」
案内された席は窓に接していて、外の道路がよく見えた。店内はほぼ満席状態で、もう少し遅ければ空くまで待っていたかもしれないくらいだ。
雅斗さんはステーキ、私はハンバーグを注文した。15分ほどで注文したものは運ばれてきて、店内のBGNを聞き流しつつ、箸を動かす。
「全部食べれるか?」
「あ、うん。たぶん大丈夫」
「無理そうだったら食ってやるから」
「ありがとう」
先に食べ終えた雅斗さんは、空になったコップに水を入れてくると言って、席を立っていった。
『今の人格好良くなかった?』『格好良かったねー。惚れそう』『彼女とかいるのかなー?』
雅斗さんが居なくなった途端に、回りの声がよく聞こえるようになった気がした。隣のテーブルで食事をしている女性二人組の声がよく聞こえる。
雅斗さんのことを話しているのは、すぐにわかった。
『声掛けてみる?』『えー……いいよー』『でも、あんた今フリーなんだから、チャンスでしょ!』
そんな会話を聞いていて、プレートに残るあと少しも食べれなくなる。
雅斗さんが取られたらどうしよう。さっき雅斗さんに一生一緒って言ってもらったはずなのに、もう不安になって来た。
箸の動きが止まって、自然と視線が落ちていく。
「悠? どうした」
雅斗さんが戻ってきた。女性二人は少し興奮気味で声が高く聞こえる。
なんでもないよ。
ふるふる、と首を振って伝えるけど、目には確かに涙が溜まってきている。
「……ハンバーグ残り食べるぞ?」
「……うん」
何がを察してくれたのか、プレートの残りは雅斗さんの口の中に消えた。
「帰ろうか。大丈夫、何も不安に感じる必要はない」
私の座る椅子の横で、雅斗さんはしゃがみこんで私の顔を覗き込む。溢れかけた涙が雅斗さんの指で拭き取られて、手を繋いで席を立った。
「雅斗さ、手……」
「いーよ」
そのまま会計を済ませて、車に乗り込んだ。運転中も、ずっと手を重ねていてくれて、少しずつ安心してきた。
「ありがと……」
小さく呟いた言葉が届いてくれたかは、よくわからない。
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