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皿の上が空になった頃に、淡島はルーズリーフから顔をあげた。
「どう?」
「そうですね……短編集でも出せそうですけど、良さそうなものは随分と絞られますよ」
「沢山あるからね」
「まぁ、そうですけど」
きっとほとんどが没になるだろう。使えるのは20%もないと思う。
「ジャンルは考えず絞って、添削をしてから最終的に5つ前後を選びましょうか」
「うん、それでいいよ」
店員を呼び、空になったカップにダージリンのお代わりを頼む。
淡島と特に出来の良いものを絞り終えた頃には、外は空が赤く染まり始めていた。
テーブル上にあるスマートフォンがバイブレーションを鳴らす。
「あ、ごめん」
「いいですよ、出てもらって」
表示されている文字は雅斗さん。
午後から打ち合わせをすることは伝えてあるから、きっと仕事が終わったんだろう。
「もしもし」
『悠か?』
「うん、仕事終わった?」
『あぁ、打ち合わせは終わったか?』
「あ、うん」
『今から迎えにいく』
「分かった」
通話を切り淡島を見れば、淡島は丁度椅子から立つところだった。
「今日は終わりにしましょう。後で添削して次の時に持ってきますので」
「うん、それじゃ」
淡島は、自分の分のお代をテーブルに起き、カフェを後にした。
「おにーさん、今一人?」
まだ温かい紅茶に口をつけ、雅斗さんを待っていると、声がした。
年は未成年だろうか。大人っぽく見せているらしい服を身に纏い、ウェーブの掛かった髪をした女の子二人組。
どうやら、私に声をかけているらしい。
「えーと?」
「おにーさんとお話ししたいなぁって」
「相席いいですかぁ?」
まさに猫を被り、媚を売っている。
香水のキツイ香りに、顔をしかめた。
「すいません、人を待っているんです」
「さっきの人じゃなくて?」
つまり、ずっと見ていたのか。
「いいじゃないですかぁ、ね?」
強引な感じで、正直苦手だ。
(雅斗さん、来ないかな……)
「じゃぁ、待っている人と四人でどおですかぁ?」
本当に苦手だ。
「すいません、」
「「えー」」
「──悠」
「! 雅斗さん」
からんからん、とカフェの扉の鐘がなり、雅斗さんの姿が見えた。
「来たので、失礼します」
さっさと去ろう。と荷物を持ち、椅子を立つ。雅斗さんの元に行こうとして、服を掴まれた。
「っ、」
「四人で何処か行きましょうよ」
「こ、困ります……」
どうしよう。しつこい。
「悪いが、急いでいるんだ」
ぐいっ、と腕を引かれ、気づけば雅斗さんの腕の中にいた。
「まさとさ」
「それに、迷惑だ」
雅斗さんが、目を細め睨み付けるように女の子二人を見ている。二人は、少し顔を赤らめて逃げるように、出ていった。
「帰ろう、悠」
「う、うん」
今度はしっかりと手を握られ、微笑みかけられる。他に人がいるのに、堂々としすぎている。
視線が痛い……
会計を済ませて、カフェを後にした。
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