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数日後の打合せで、淡島から受け取った添削されたものに、文章を追加していた。
「これって、あれか?」
夜。書き終えたものを、雅斗さんは読んでくれていた。
ソファに座りながら雅斗さんは紙を捲って、何かを感じたのか手を止めた。
「あれ?」
「えーと、擬人化、だっけ」
「うん。それっぽい感じかな」
【本が図書館常連に子に恋をする。】
そんな話。
「図書館で思い出した」
突然、雅斗さんはそう呟いた。
「何を?」
「高校の時に悠ってずっと図書館に通ってただろ?」
「え、あ……知ってたの?」
いきなり、十年近く前のことを言われて少し戸惑っていれば、雅斗さんは微かに笑みを浮かべた。
「図書館に俺もよく行ってたんだよ。同じ制服のやつは滅多に見なかったから、印象的だったよ」
「そう、なの?」
「あぁ、熱心に勉強してただろ」
「あ……」
きっと、雅斗さんがよく目にしてたのは、学年1位の雅斗さんの横に並びたいと思っていた頃のことだと思う。
「そのあとのテストで首席取って、初めて名前知ったんだよ」
「あれは……その」
カンニングやらと不正を噂されて、すぐに首席から外された。それがきっかけで、虐め同然のことが始まったんだ。
思い出して俯けば、雅斗さんは頭を撫でてこう言った。
「俺は、不正したなんて信じてないよ」
「え……」
「あんなに勉強頑張ってたんだから、不正する必要ないだろ」
「雅斗さん……」
あのとき、信じてくれる人など一人もいなかった。
時間が経っているが、雅斗さんにそう言ってもらえただけで、涙が出そうになった。
「もしかしたら、そん時から惹かれていたのかもしれないな」
「なっ……!」
雅斗さんのカミングアウトに驚いて、ばっ、と顔を上げれば雅斗さんは少し恥ずかしそうに笑みを浮かべて、私を見ていた。
「悠は?」
「へ」
「悠はいつから?」
真顔で、雅斗さんが私を見ている。
これは、私も言わないといけない流れらしい。
「えっ、と……夏休み明けの体育祭で……」
体育祭のチームが同じで、最終種目のリレーのアンカーを走っているのを見て、一目惚れをした。
「それで、……雅斗さんの横に並びたいって、勉強頑張って……」
結局、すぐになかったことになったけれど。
そのまま、ありのままを雅斗さんに話せば、本人は何故か手で顔を覆っていた。
「? 雅斗さん?」
「あー……くそ、可愛いすぎるわ」
そう言葉を溢して私を抱き締めた雅斗さんの耳は真っ赤に染まっていた。
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