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コンコン、と扉がノックされ、私は返事をする。
「どうぞー」
ペンを握る手を休めて、扉の方に体を向けると、雅斗さんがカップをもって立っていた。
「悠、コーヒー持っていたが」
「あ、ありがとう」
原稿が積み上がる机の上にカップが置かれ、雅斗さんは心配そうに私の頬に触れた。
「ん……?」
「あんまり、無理するなよ。隈ができてる」
「大丈夫だよ。久しぶりなんだから、少しでも早く完成させないと」
読者の人は待っててくれてるからね。
昨日から本格的に書き上げ始めている。昔から書き始めると熱中してしまう質(たち)で、徹夜していた。
頭の中から物語たちが消えてしまわないうちに、出してしまわないと可哀想だから。
雅斗さんは少し辛そうな顔を浮かべて、私を見ている。
「心配しないで。迷惑は掛けないからね」
「馬鹿、心配するに決まってるだろ。それに、迷惑はかけてほしいくらいなんだよ」
「……そう?」
「あぁ。兎に角俺は仕事に行くけど、飯はしっかり食べろよ」
じゃあな、と唇にキスを落とされて、雅斗さんは部屋を出ていった。
玄関の扉が閉まる音を聞いて、ペンを持ち直した。
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