アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
83
-
体が硬直する感覚に陥った。
「ひ……ぅあ……」
足が震え、背筋が凍る。
恐怖、恐怖。こわい。
喉が引き吊るようで、声が出すことができない。
「この間はよくも逃げてくれたな」
「や、……ぅ」
「また買い物かよ。金持ってるだろ。出せよ」
高校時代は、慣れてしまってこんなに怖くて、震えることはなかったのに。なんで、こんなに。
恐怖のせいで、声を出すことも儘ならない。
「おい、聞こえてんだろ」
声ひとつひとつに、行動、動作ひとつひとつに、何をされるのか敏感に反応してしまい、体が震える。
涙が出てきそうで、必死に堪える。
──ま、まさとさ……
今は、兎に角雅斗さんに早く戻ってきてほしかった。
雅斗さんに助けてほしい。
はやく。
「おい、何やってんだ」
いつもより低い声。すぐにわかる。雅斗さんだ。
魔法のように震えが小さくなった。雅斗さんを見れば、両手にお茶のペットボトルとコーヒーの缶をもって、顔は起こっているようだった。
「悠、大丈夫か?」
「っ、うん……」
すたすた、と歩み寄ってきて手を繋いで、ここから立ち去るように腕を引かれる。
「……もしかして、伊東センパイ?」
同級生の言葉に、雅斗さんは足を止めた。
「だったらなんだ?」
「まじかよっ、この間の男の次は伊東センパイとか、」
同級生は腹を抱えるように笑っている。
「ホモかよ、キモッ」
その言葉を聞いた瞬間に、雅斗さんの雰囲気が変わった気がした。
雅斗さんは私に持っていた飲み物を渡し、同級生との距離を詰めた。
がしっ、と同級生の首元の服を掴み上げ、雅斗さんは口を開く。
「うるせぇんだよ。お前には関係ねぇことだろうがよ。餓鬼みたいなこといってんじゃねぇよ、殺.すぞ」
まるで地を這うような、聞いたことのないほど、低い声だった。雅斗さんがどんな表情をしているのかは見えないが、同級生は今にも泣き出しそうな顔をしているのが見えた。
雅斗さんは言うことを言って、私の腕を掴み、車に乗り込んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
100 / 948