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悲痛な俺の声が千晶の耳にギリギリ届いたのだろう。
彼女へと送られていた視線が自分に向けられた。
「紗義なんで…」
ズンズンと足を進め
目の前まで行く。
「なんでじゃねぇよ!
みんな心配してるのにお前は女とラブホ
にきてんかよ!ふざけんなっ!」
そう
今まさに2人はその足をラブホテルに
踏み入れようとしていたのだ。
でも、そこが問題だったのではない。
俺が一番気にくわないのは
「散々人のこと好きとかなんだとか言っといて、よくも女を抱こうとしたな。
はっ、もう飽きたってか?
弟をからかうとかいい度胸してんだな」
こんなこと言うつもりじゃ…
ただ俺は家に帰ってこないから心配で
「いいご身分だな〜
周りには心配させるだけさせといて
女とイチャイチャ」
「ちょっと、あんたなんなのよ?!」
「うるせぇ!
心配かけたくなかったら
こんな家に近い駅のホテルなんて使うべきじゃなかったな。」
「………………」
「そしたらバレずにすんだのにねぇ〜」
あることないこと
俺の口からは千晶を貶める言葉しか出てこない。
なんで
手を引いて
『帰ろう』と素直に言えないのか
なんで、なんで……
もう泣きそうだ。
「ぅ…も、俺帰る。」
何も反応せず
俯いているだけの千晶にはもう何を言ってもダメだとわかった。
ただ俺が傷つけているだけだと
だから
俺は来た道のほうに振り返った。
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