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深澤と昼休み。 Ⅱ
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「……深澤」
「ん?」
「苦手なものは、何だ?」
さっきの事があったので、食べ終わってすぐに聞いてみた。
微妙に泣かせてしまったし。
「えっとね、酸っぱいのとか苦いのとか辛いのはちょっと苦手かなぁ。少しは大丈夫なんだけど、あんまり強いのは口がうぅ〜ってなっちゃうから。甘いのとかはすっごく好き!」
………子供か。
「甘い物……玉子焼きとか?」
「何でも。玉子焼きとかもだし、ケーキも」
「ふ〜ん。ケーキ、か」
「篠ちゃんは?」
「俺?」
唐突に聞かれて思わず聞き返すと、こくんと頷かれた。
参ったな……。
「俺は……甘い物はどっちかって言うとその……苦手、だな」
甘い物が好きと聞いた所なので、あまり言いたくなかった。
予想通り、ちょっと傷付いた顔をしている。
やっぱり言わなきゃ良かったか。
「何で?」
「……胸焼けしそうになるから。クリーム類とか、特に」
「そっかぁ…………」
ほんと、言わなきゃ良かった。
こいつの傷付いた様な顔は、見たくない。
すごい罪悪感に囚われる。
どうしよう。
どうしたら、また笑ってくれる?
……あ、そうだ。
「……でも、作るのは嫌いじゃ、ない」
「え?」
「いやその……俺はあまり食べないが、作るのは出来る」
「……何で、作るのは好きなの?」
「好きって程では……あの、形とか味とか、作業を間違えなければ綺麗に作れる所が、楽しい。…………数学の問題、みたいだ」
俺がそう言うと、深澤はぽかんとした顔で俺を見ていた。
……流石にケーキと数学を同列に持ち出したのは、不味かったかな。
「っ、ふふ、あははっ!」
「?! な、何だいきなり……」
「あのね、篠ちゃんらしいなって…………っあははははっ!」
「俺らしい?」
「うん、だって、ケーキに数学を持ち込むの、きっと篠ちゃんぐらいだよ!」
「…………仕方ないだろう。俺はそういう事しか……」
「うん、知ってる。ほんとはすっごい不器用だもんね? 人との接し方とか」
「……っ?!」
こいつ、エスパーか何かか?
心が読めるのか?
「そ、その……それは……」
「でもね」
なんとか反論しようとしたら、途中で遮られた。
「俺は篠ちゃんのそういうとこ、嫌いじゃないよ。……どっちかっていうと、好きかも」
「っ?!」
いきなり、笑顔でそんな事を言われた。
急に自分の心臓の音が聞こえて来て、理由は分からなかったけれど、これが深澤に聞こえませんように、と焦った。
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