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深澤と昼休み。 Ⅲ
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「ねぇ、篠ちゃん」
「……何だ」
「今度、ケーキ作ってくれる?」
「……暇があったら」
「ほんと? やった、篠ちゃんのお手製ケーキが食べられる!」
そんなに楽しみなのか?
ケーキ。
俺はあの甘ったるい匂いとかも含めて、苦手なんだが。
……まぁ、こいつの頼みだし、良いか。
「じゃあさ、篠ちゃんは食べ物の中では何が好き?」
「ん……ピザ」
「ピザ? 何で?」
「具の並べ方が好きだ。等間隔のやつとか特に」
また、深澤の口がぽかっと開いた。
「篠ちゃん」
「…………?」
「それってまた、『数学的な思考』ってやつ?」
その通りだったので、頷いておく。
「もう……篠ちゃんらしいと言えば篠ちゃんらしいけどさ、俺が言いたいのはそう言う事じゃなくて!」
……ジト目で睨まれた。
?
他にどんな要素があるんだ?
「篠ちゃんが、『美味しい』って感じる物は何、って聞きたいの!」
『美味しい』?
食べ物は基本誰でも食べられる物だから、そこまで不味い物は無いと思うが……。
あ、でも甘味系は例外。
甘過ぎる。
「あれは食べ物じゃない…………」
「へ???」
「あ、いや。何でも無い」
気付かない内に声に出していたらしい。
うっかりしていた。
「甘い物が苦手、ってのはさっき聞いたけど。じゃあ逆に、何が好きなの?」
好きな物……そう言えば、あまり考えた事が無かった。
一つはっきりしているのは、甘味系が苦手だという事で……。
あ。
例外と捉えても良いやつがあった。
あれはあんまり甘くないから、落ち着く。
「ビターチョコレート……」
「え?」
「ビターチョコレート。あれはあんまり甘くないから、食べられる」
「…………甘くない、どころじゃないよ! あれめっちゃ苦いじゃん!」
「…………そうか?」
そんなに苦かったか?
あのチョコ。
「う〜ん、やっぱりちょっとズレてるんだよねぇ……まぁ、いいんだけどさ」
何やら考え込んでいる。
そんなにおかしなこと言ったか?
俺。
そうだ、一つ思い出した。
そのうち深澤に聞こうと思って、忘れていたこと。
「深澤」
「ん? 何?」
「何でお前、俺の事妙な呼び方するんだ?」
「? そんなに変だった、あの言い方」
「いやその……単に俺がそういうのに慣れていないせいかも知れないが」
「けど?」
「何か……くすぐったくて仕方ない」
俺が感じたままを言うと、深澤はやっぱりちょっと変な顔をした。
仕方ないだろ、本音だし。
「んん〜じゃあ、『京』って呼んだ方が良い?」
「……まぁ、どうしてもそれが良いなら」
「じゃ、こんどから『京』にしよっと。……あ、そうだ京」
「?」
「俺の事もいい加減『深澤』って呼ぶの止めてよね。一緒にお昼だって食べてるんだし」
「い、いや俺は…………。」
「『修』。こんどからそうしてね!」
「みさ………………」
「『修』」
「う……、しゅ……う」
「うん!」
断ろうと思ったのに。
名前呼んだくらいでそんな笑顔を見せられたら、断れないじゃないか馬鹿っ!
うぅ……やっぱり名前呼びとか苦手だっ!
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