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京介はこのところ感じている複雑な心境に苛立った。
聖也と食事に行ってからというものの、聖也の顔を見るだけで動機がしてしまう。
聖也はいつもと変わらず、コンビニに来てはまた食事に行こうと誘ってくる。
「は~」
一日の講義を終えた京介は、バイトの時間まで大学内にあるカフェテリアで過ごすことにしている。この時間のカフェテリアは賑わっていた。
「どうかしたの?」
透明な声が頭上に聞こえて、京介が顔を上げると目をぱちくりとさせた朱実が不思議そうな眼差しで見つめていた。
手にはトレイを持っていて、その上にはコーヒーカップが置かれている。
「一緒にいい?席、空いてなくて」
「あ、うん」
朱実は京介の向かいの椅子に座った。
「今日もバイト?」
「ああ。時間つぶし」
「そっか」
朱実はにこやかに笑い、コーヒーを啜る。
「お腹、どう?」
「ん。順調。まだわからないでしょ?」
愛しそうにお腹を撫でる朱実の姿は、綺麗だと思った。
不思議と嫉妬感はない。
「ねえ、京介」
「なに?」
声のトーンを落としながら伏し目がちに伺う朱美にさりげなく聞き返すと、朱実は何かを言いかけようとしてためらう素振りをみせる。
「どうした?」
怪訝に思って首をかしげると、朱実は静かにかぶりを振った。
「ごめん。なんでもない」
「・・・・・朱実?」
朱実のくぐもった表情に訝しげな視線を送るが、朱実はぱっといつもの明るい表情をみせた。
「あ、そうそう。この間ね」
「・・・・・・」
何か聞きたそうな顔つきだったが、京介はそれ以上追求しなかった。
(気のせいか)
ほどなくして健吾がやってきた。
「悪い、待たせたっ・・・・・・って京介と一緒だったのか」
「うん。もう終わったの?」
「ああ」
「待ち合わせってわけか。仲睦まじいな」
嫌味な口調でニヤリと笑みを浮かべながらそう口にすると、健吾は「からかうな」と照れてみせた。
「俺もコーヒー飲もうかな」
「ああ。俺、そろそろ行くわ」
「え」
「バイトの時間だし」
それは本当だった。それに京介がいるより二人の方がいいだろうと素直に思えた。
「そっか。じゃ、コーヒー買ってくるな」
「うん」
朱実に言って健吾がカウンターに向かう。その後ろを京介も帰るついでに後を追った。
「なあ、健吾」
「ん?」
「朱実、何か変わったことないか?」
京介の言葉に健吾はさあ、と小首をかしげる。
「なんで?」
「いや、なんとなく」
「ふ~ん。そういうお前の方が何か悩みがあるんじゃない?」
「え」
逆にそう聞き返されて、京介はギクリとした。
(って、あれ?何で俺、焦ってんだ?)
「恋の悩みならいつでも相談のるぜ?」
軽くウインクをみせて言う健吾に、アホかと肩をつついた。
恋の悩み?まさか。
そんなことないと軽くかぶりを振る。
だが健吾とこうして喋っていても、今まであった苦悶が感じなくなっていることに気づいた。
「じゃあな」
「また飲みに行こうぜ」
「ああ」
ひらひらと健吾に手を振ってカフェを後にする。
外は相変わらず底冷えする寒さで、闇に近づく夕暮れの空をぼんやりと見上げた。
コンビニに向かう足取りがいつもよりも軽くなっていることに、京介は気付かない振りをしたー。
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