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異父姉弟
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「ーーっ…」
翌日の朝のHR前、暁の机はゴミだらけで、しかもかなりの量だった。
机の上と机の中、椅子…全てを片付け終えた時には、HRが始まる30秒前だった。
「臭い…」
ゴミの中には生ゴミも混じっていたようで、机の中からは汚臭がした。
しかし、HRが始まってしまい、そこまで手はつけられなかった。
(教科書に臭いがついちゃうな…)
それでも、後ろに置いた鞄からいちいち教科書を取り出すのは手間である。
仕方なく、暁は机の中に教科書を入れた。
どこからか視線を感じ、周りを見回してみると、山上達がこちらを見てニヤニヤしていた。
それとはまた別の視線を感じ、そちらにも目をやると西城が見ていた。
が、すぐに目を逸らされた。
その後も、暁に対する嫌がらせは続いていた。
トイレから出るとバケツに入った水を頭から被せられ、やむ無くジャージに着替えた。
だが、そのジャージも隠されており、次の授業は遅刻した。
また、先生に頼まれた資料を職員室まで運んでいると、何かに躓き転んだ。
目線を上にあげると、山上達が笑っていた。
足を引っかけられたという事に一瞬で分かった。
山上達の笑いながら去っていく足音を聞きながら、暁は散らばった資料をかき集めた。
その間、西城はその様子をずっと見ていた。
助けるわけでも、嘲笑うわけでもなく、ずっと見ていた。
山上に呼ばれ、西城はようやく動いた。
ーーどうして、どうして…。
暁は心の中で同じ言葉を繰り返し、涙を流した。
山上達の苛めから一週間が経った。
精神的に参っていた暁は、日曜日にとある人物に電話をしていた。
辛くなった時、心の支えとなる人物の声を聞いて安心したかったのだ。
「今日は、お仕事がお休みのはず…」
『はい、もしもし…』
5コールぐらい鳴ったあと、受話器の向こうから気だるそうな女性の声が聞こえた。
暁はホッとして声をかけた。
「…お姉ちゃん?僕だよ」
『ふぁ~あ…あぁ、暁かぁ。この間も電話してこなかったっけ?』
大きな欠伸をしながら暁の姉、蔵本 葉月ー以下、葉月ーは語りかけた。
暁は、進級やテスト期間が終わる度に葉月に電話をかけていた。
姉がいないと、どうしても不安で仕方ないのだ。
「うん…でも、声が聞きたくなって…」
『シスコンも大概にしときなさいよー?まぁ、姉弟っていっても半分しか血が繋がってないけどね』
あっけらかんと葉月が言っている通り、葉月と暁は父親が違う姉弟だった。
葉月と暁の母親はとんでもない遊び人で、お金でしか人を見ていなかった。
葉月曰く、母親が酔って道に倒れている所を、たまたま仕事帰りの葉月の父親が見つけ、そのまま介抱したのが出逢いだったらしい。
葉月の父親が企業の社長ということを知った母親は誘惑し、結婚まで持ち込んだ。
その時に産まれたのが葉月だった。
葉月の父親は威厳があり、妻の遊び癖を厳しく取り締まっていた。
しかし、葉月が小学3年の頃に葉月の父親が事故死し、母親の遊び癖が一気に爆発した。
その時に暁の父親と出逢い、葉月の父親同様、結婚まで持ち込んだ。
暁が産まれたのは葉月が小学4年の頃だった。
葉月が中学2年の頃に、妻が既に子持ちだった事をようやく知った暁の父親は、子供も一緒に暮らさないかと話を持ちかけ、そこで葉月と暁は出会った。
当時4歳で突如現れた知らない人物を姉と紹介され怯えていた暁だったが、葉月の面倒見の良さにすぐに懐いた。
裕福で、なに不自由ない暮らしかと聞かれるとそうでもなかった。
父親がいる時の母親は子供たちに優しかったが、出張などでいない時は子供を置いて遊びに行った。
『私のお陰で綺麗な顔してるんだから、その辺のやつを取っ捕まえて食べていけばいいじゃない』
母親にそう言われた言葉には、皮肉と嫉妬が入り雑じっていた。
家事は任せっきりにされていたので、食事は父親から貰ったお小遣いで間に合わせのものを作った。
葉月は、宛にならない両親を一度も親と思ったことはなかった。
暁も、ここ最近は両親と呼んでいいのか悩んでいる。
学校帰りに夕飯の買い物に行くのが二人の毎日の楽しみだったが、ある日事件が起きた。
葉月が高校3年、暁が小学2年の頃。
いつもは葉月が暁を迎えに学校に行くのだが、その日は担当の教師の手伝いで迎えが少し遅かった。
葉月の迎えが遅いので心配した暁は、葉月の学校まで一人で向かった。
学校まではそれほど遠くなかったが、葉月の通っていた高校は女子校で、近くに変質者が多いことで話題だった。
しかし、学校が違う為そんな話を聞かされていなかった暁は、道を歩いていた所を襲われた。
身ぐるみを剥がされ、すんでのところを通りすがりの人達に助けてもらった。
『顔が綺麗だから、女の子かと思った』
変質者の言葉にショックを受けた暁は、自分の顔を嫌うようになった。
葉月も同じく変質者に襲われた事があり(返り討ちにしたが)、その時に言われたのが「遊び人の面」。
近所からは「美人姉弟」「モデル姉弟」と密かに呼ばれていた。
『僕…この顔、もういやだよぉ…』
すがりつき泣きじゃくる暁を、葉月は静かに慰めた。
同時に、自分たちの顔を作った母親を呪った。
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