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★明の料理
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明と握手のようにして手を握った後、明はすぐにアパートを出ていってしまった。
「蓮は強いから大丈夫」……明は、そう俺に言った。
……強くなんかない…。強くなんかないから…。
だから、こんなにも残された手が寂しそうなんだよ…。
帰ってきてよ…。どんな理由でも良い…。
和也と付き合ったままでも何でも良いから…。
帰ってきてくれ…………。
そう心の中で願い、涙した。涙がつぅ…と頬をつたい枕を濡らしていく。
すると、また眠気が襲ってきて静かにそのまま目を閉じた。悪い夢なら覚めてくれ…。そう心の中で呟きながら…。
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次に目を覚ますと夜中の3時ごろだった。悪夢じゃなく現実だったことに絶望を感じた…
………めっちゃ寝てたな…だるさは無いけど頭が少し痛いし喉も痛い。
泣きすぎたせいか目が腫れてるような気がした。
食欲は無かったが、明が料理を残してくれたことを思い出し、ガバッとベットから出てキッチンへ向かった。
何つくってくれたんだろ…。そう思ってパカっと冷蔵庫を開けると、茶碗蒸しが2、3個はいっていた。
「…うまそう…だな……」
素直にそう思い茶碗蒸しを取り出しスプーンですくってその場で一口 食べた。
風邪の俺のことを思ってか少し薄味で、優しくて柔らかい明の優しが詰まってるようなじんわりと温かい味がした。
「…くっ……ふ…う………。」
ボロボロとまた涙がこぼれ、冷蔵庫にあった茶碗蒸しを凄いスピードで全部平らげた。
「あっ、あぁっ明っ………明…ぃ…」
明、明。
もう戻ってこない、俺の愛おしい人。
諦めることは、きっとできない。忘れるなんてできない。
今でもまだ俺の手の中には明が残っていて、明の手料理の味がこうして口の中に広がっている。
懐かしい。懐かしい。懐かしい。懐かしい。そして、ただただ愛おしい。
涙で歪む視界の中で、明の笑顔がぼんやりと目に浮かんだような気がした。
「明…………………」
切ない声がアパートの1室に響いた。
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