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☆理由
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カツン――……と音を立てたペアリングはコロコロとアスファルトの上を転がっていく。
俺はハッとして、すぐさまペアリングを拾い上げた。
アパートにいた時には過ごしやすい日だと思っていたけど、やっぱり今は夏で落ちたペアリングは少し熱くなっていて驚いた。
俺は そんな少し熱くなっているペアリングをギュゥッ…と握り締めた。
足が動かない。早く離れなくちゃいけないのに……足が地面にくっついたみたいに動かない。
和也は、ずっと俺の腕を掴んだまま離さない。
「明。」
「和也……離して……」
このままではいけない。このままいたら俺はきっと……
「やだ。」
和也はキッパリと言って離そうとしない。
「ダメなんだって……!!今は…今は…!!」
こんなの間違ってる……。でもダメなんだ。今、誰かに頼ったりしたら…!!
「明。」
声がして振り向けば、和也が静かに じっと こっちを見ていた。
「日代と……なんか、あったのか…」
和也の声に俺は黙ったまま、ペアリングを握り締める力を強めた。
「明………なんか…あったんだな…?」
無言のまま下を向いて ふるふると横に首を振る。
ダメ……ダメダメダメダメダメ……!!
ダメなんだ…!!!誰にも…甘えちゃいけない…!!!
甘えちゃ……甘えちゃいけないんだ……
「明………何にもないならなら…なんで そんな辛そうな顔するんだ……」
それ以上…何も言わないで……
優しい言葉……かけないで………
「俺を頼ってよ」
やだ………ダメだって………
そんな優しい言葉…かけっ、られたら…っ…
「だって俺………」
それ以上は………っ、ダメなんだって……優しい言葉は……っ
「明が……好きだから……」
俺はっ、俺は………っ
「和也っ………」
俺は和也に抱きついた。
だから優しい言葉はダメ…なんだって言ったのに……
俺が………誰かにすがってしまうから……
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『明…………』
同時刻。あの静まったアパートには、彼の か弱い、『誰か』を求める甘い声が響いていた……。
でも、その声が『誰か』に届くことはなかった。
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