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☆和也家⑥
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俺が微笑むと和也は嬉しそうな顔をした。
でも俺が ゆるゆると横に首を振ると、和也はピシッと固まってしまった。
「和也は好きだよ……でも俺は蓮を忘れるなんて出来ないと思う…
いや、忘れちゃいけないんだと思うんだ…
それに、こんな中途半端な気持ちじゃ和也にも申し訳ない……
だから、ごめん……」
「そっ、か………」
和也は少し寂しそうに笑った。
その笑顔に胸がズキンと痛む。傷つけることって、こんなにも切ないんだ……
「でも、俺は諦めないからなっ!」
そう言ってニヒヒと笑い俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
優しいその手に思わず涙が出そうになる。
ありがとう、和也………いつか…和也を完全に好きになれたら良いなって思う……。
その時、自分でも驚くほど自然と笑顔になれたんだ。
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「それにしても………」
和也が俺の持っていた鞄を指さす。
「その大荷物……日代と住んでた所 でてきたのか…?」
「えっ……ぁ、うん………」
いきなり痛いところを突かれてモゴモゴと煮えきらない返事になってしまう…
きっとこんなことを言ったら和也は…
「じゃあ、ここに住めば…「それはダメだよ!」
和也の言葉を遮る。……やっぱり…。和也は優しいから「ここに住め」って言うと思った…
でも、そんな迷惑はかけたくない。そこだけは譲れないんだ。
俺がピシッと言うもんだから、和也は目をパチクリさせてケタケタと笑った。
「じゃあ 明どーすんだよー、住むところー」
「ぅ………今日は安いホテルに泊まるよ…。夏休み始まるから、じっくりアパートは……
「ピリリリリリリ~♪」
俺の携帯が音を立てた。この着信音だと…電話か。それにしても何てタイミングで………誰、だろ………
あまり画面を見ずに電話に出る。
「……もしもし……?」
そんな俺を見て和也は少し心配そうにしていた。
『あ、もしもし!明~?元気~~?』
携帯からは明るくて元気で聞きなれた懐かしい声が聞こえた。
「え、ね、姉ちゃん!?」
電話の相手は仕事をしている俺の姉ちゃんだった。
電話の相手が姉ちゃんだと分かると安心したのか、和也はニコニコしていた。
久しぶりの家族の声に俺も嬉しくて笑顔になってしまう
『そ~よ~!あなたのお姉さんの杏奈ちゃんよ~』
カラカラと笑う その調子に姉ちゃんも元気なんだとホッとする。
「あ、それにしても姉ちゃんどうしたの?急に電話なんて。」
『あ、そうそう。私 仕事の都合で こっちに戻ってきてんのよ~』
「えっ………!?俺、聞いてないよ!?」
『えぇ~~~!聞いてないの~~!?
もぅ~…!パパとママに私 忙しいから明に話といてって言ったのに~…』
「まぁ、父さんと母さんだから……」
『んー、まぁ、それもそーねww』
父さんと母さんは少し抜けてるところがあるからなぁ…
『あ、それでね。私 今一人暮らしなんだけど~……女の人 一人って危ないじゃない?今物騒だし~……
だから、明が良ければなんだけど一緒に お姉ちゃんと住まない?』
「え、良いの…!?…でも、物騒とかじゃなくて本音は…?」
『…帰ってきた時、一人は寂しい。ご飯作るのめんどくさい。』
「よろしい。」
『じゃあ、もう今から荷物もって来なさいよ~!
10分後に駅前のドーナツショップに集合ね。』
「は!?じゅ、10分後!?」
『そーよー!じゃ、会えるの楽しみにしてるわよ~!♡』
プツッ。ツーツーツーツーツー…
…切れちゃった……てか、10分後って…!ダッシュしないと間に合わないじゃんか…!!
「えーと、明、どうした…?」
パパパパパッと荷物を両手に抱える。でも、これで住むところは確保できた。
「ごめんな、和也!俺、これから行かないと…!!紅茶ごちそうさま!
後から色々連絡する!ほんと色々ありがとな!
じゃあ、またー!!」
早口で言ってバタバタと和也家を後にしてダッシュで駅前まで走る。
その俺の後ろ姿を見て和也はクスッと笑った。
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