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明の気持ち⑥和也side
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明が俺の名前を呼びながら そろぉっ…と俺の顔を覗いた。
顔を真っ赤にしている俺に気がついたのか、「顔を真っ赤!」と言おうとした明の言葉を遮って明の腕を引っ張り、自分の方に引き寄せた。
明の体は軽く、ぽすん…と俺の体に寄りかかる。そのまま明をギュッと抱きしめる。
明が俺を押し退けなかったり、さっきの惹かれているって発言で俺は嬉しくて情けないことに少し腕が震えてしまった。
明の甘い良い香りに胸が高鳴り、このまま抱きしめていたくなった。
明も俺も ずっと黙ったままだったが、このままじゃいけない。俺は思っていることを明に伝えたい。
「か、ずや……?」という明の声に俺は「ごめん」と謝った。
「明が辛いのは分かってる………
分かってるんだけど………
明が少しでも、恋愛感情で俺を見ていてくれていたのが…嬉しくて……嬉しくて……
ごめんな。明は、辛いのにさ……」
そう言った俺の顔は まだ真っ赤で、でも明の頬も少しピンク色に染まっている気がした。
その頬に胸がきゅぅん……と締め付けられ、明の綺麗な手をとり、チュッと口づけをした。
我ながら、なんて恥ずかしい事をしているんだと思ったけど、今言わなかったら もう勇気がでないと思った。
「明、もう一度 言う……
俺は明が好きだ。大好きだ!
……こんな時に言うのは卑怯かもしれない。でも、俺は明が欲しい…!」
明の目を見て しっかりと告白する。でも明は「っ……」と言葉が詰まっているようだった。
きっと、まだ日代が忘れられないんだろう。明の様子を見れば、明白だった。
俺が尋ねると、やはり「うん……。」と小さい声で答えた。
でも俺に惹かれてもいるのかと聞くと苦しそうに「うん……っ。」と また答えた。
自分は酷い奴だとも思ってるんだろうか……
そんなに辛くて苦しいなら、俺が楽にしてやりたい…。
そう思って俺と付き合うことを提案したが、明は柔らかく微笑んだ後、ゆるゆると首を横に振り、
「俺は蓮を忘れてはいけない。」
と、断られてしまった。
その揺るぎない想いに悲しくはなったが、逆に明に愛されたらどんなに幸せなんだろうか……なんて、柄にもなく思った。
俺はまだ諦めたくはない。それを明に告げて いつものように明の頭を撫でる。
これだけは俺の特権だと信じていたくて……。明は綺麗に微笑んだ。
その明の笑顔は今まで見た中で一番綺麗だと思った。
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そういえば。と、明の荷物を指さして「住んでたところを出てきたねか」と聞くと、
明は気まずそうに「ぇっ、あ、うん……」と、もごもごと煮えきらない返事をした。
てことは、住む場所決まってない……?
じゃあ、ここに住めばいいんじゃね?と思って明に言ったが、これまた断られてしまった。
明らしい答えにケタケタと笑うと、やはり「これだけは迷惑はかけられない」と譲らないので、仕方なく諦めた。
じゃあ、どーすんだよー。という質問に明は「今日は安いホテルに泊まるよ…。夏休み始まるから、じっくりアパートは……」
というところで明の携帯が音を立てる。……電話か…?
だ、大丈夫か…?日代か…?もしかして揉めるんじゃ…?という心配があったが通話をしている明は、とても嬉しそうで安心した。
時々聞こえる「姉ちゃん」という呼び方に、「今は姉貴と電話している」ことがわかった。
楽しそうに通話していた明は急に焦り出して電話をきり、次の瞬間 慌てて荷物を抱えて玄関へ走っていった。
急のことに焦っていると、
「ごめんな、和也!俺、これから行かないと…!!紅茶ごちそうさま!
後から色々連絡する!ほんと色々ありがとな!
じゃあ、またー!!」
と早口で告げると走って行ってしまった。その後ろ姿が何だか晴れ晴れしていて、くすっと笑ってしまった。
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そこでパチっと目を覚ます。むくりと体を起こした。ふわんと美味しそうな匂いがして、空腹感が押し寄せる。
あれ、俺……?と思って周りを見渡すと、もうすっかり暗くなっていて、キッチンからは鼻歌で料理を作る母親の姿が見えた。
いつ間にかソファーで寝てたのか………。明…どうしてるかな……具合悪くないかな……
起こしていた体を脱力感から またソファーにボスっと横たわる。
あとで携帯確認してみよ……
それにしても、濃い一日だったな…。目を閉じれば明の姿が浮かんできて、自然と笑顔になる。
明には振られちまったけど、まだ可能性はあるし…!
振られたけどなんだか、とても清々しい気分だった。
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