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☆壁ドン
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「…は…ぇ………?」
いきなりの壁ドンに間抜けな声を出してしまった。
壁ドンをしている人を見ると俺らと同い年くらいの男子高校生だった。
まぁ、うん……誰が見ても なかなかのイケメンで前髪を上げていて人懐っこそうな感じの…
名前がわからないから…壁ドン君でいいかな……。
おそるおそる壁ドン君を見ると俺と目が合った。
壁ドン君は俺に、にっこりと笑って痴漢をギロッと睨んだ。
睨まれた痴漢はギョッとしてそそくさと人混みの中に消えてしまった。
………た、助かっ………た…。そう思ったら急に安心して腰が抜けてしまった。
「おっと……」
壁ドン君は腰が抜けてしまってバランスの崩れた俺を支えてくれた。
「すみ、ませ……」
「いいから、いいから!そのままで大丈夫ですよー」
壁ドン君は離れようとした俺を、そのまま支えてくれた。
………申し訳ない………。壁ドン君 以外は痴漢の行動は気づかなかったらしく、安心した。
……あんなの、誰にも見られたくないから…。
そしたら急に涙こみ上げてきて体がカタカタと震える…
グッと下唇を噛んで必死に耐えた。
壁ドン君は、そんな俺に気づいたのか窓の外を見ていた。
壁ドン君の優しさが胸に じんわりと染みた………。
それから少し電車に揺られていると、降りる駅になった。
俺が降りると、壁ドン君も降りる駅だったらしく一緒に降りた。
降りる頃には俺も普通に立てていたから、降りて即座に壁ドン君に頭を下げた。
「本当に…ありがとうございました…!」
俺がいきなり頭を下げたことにビックリしたのか、少し間があったが壁ドン君は
「いえいえ!当然のことですし…!
頭あげてください…」
と優しく言ってくれた
そろー…っと俺が頭を上げると、壁ドン君はにっこりと笑ってくれていて何だか胸が熱くなった。
見ず知らずの俺に優しく接してくれて とても嬉しくなった。
「いや、でも、何かお礼をさせてください!」
ハッとなって、大きな声で壁ドン君に言う。
「え!?
いいっすいいっす!そんなに気にしないでください。」
しかし、壁ドン君は慌てたように手をブンブンと横に振った。
どこまでいい人なんだ……壁ドン君…。
あ、でもいつまでも壁ドン君じゃ失礼だよな……
「あの、じゃあせめて名前だけでも…」
遠慮がちに聞くと、壁ドン君は変わらない笑顔で答えてくれた。
「石塚 理央っす!」
「いしづか…りおさん……。あの、本当にありがとうございました…!
俺は金井 明っていいます!」
「金井 明くん…イイ名前っすね!」
屈託のない人懐っこい笑顔に本心で言ってることが伝わってきて俺もつられて笑顔になる。
すると石塚さんは自分の腕時計を見て「やべっ!」と呟いた。
「すいません!じゃあ、俺 用事あるので…!
金井くん じゃあね!」
石塚さんは、そう言ってさっそうと人混みの中に消えてしまった。
あ、行っちゃった………。それにしてもいい人だったなぁ……。
そう思って時計を見ると1時まであと少しだったからトイレで少し乱れた服を直し、俺も急いだ。
痴漢から助けてくれたのが蓮だったらな……なんて馬鹿なことを思った。
俺は本当に馬鹿だ……
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