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☆出会った。
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「蓮………」
「日代………」
俺たち二人の目の前には白い傘を指して立ち尽くす蓮がいた。
蓮が指している白い傘が蓮の金髪に怖いほど似合っていて、雨が綺麗に見えた。
時間が止まっているように、雨がゆっくりとスローモーションのように見える。
俺は何も出来ずに固まって体中に汗をかいていた。
しだいに、力が抜け…俺たちが繋いでいた手がするっ……と解けてしまった…。
蓮がじぃっ…と離されていた手を見つめている気がして、何とも言えない気分になる…。
どうしよう………。蓮に和也とのこと…話した方がいいのかな……?
でも、普通そんなこと聞きたくないよね…?
いや、でもいつまでもこのまま黙っているわけには………。
沈黙が続く。俺と和也は何か言おうと思っても言葉が見つからずに息を呑んだ。
そのまま時間が流れていく。
蓮は何も思っていないかのような無表情で黙ったまま変わらずに立っていた。
「日代………」
沈黙の中、口を開いたのは和也だった。
和也は蓮の名前を呼び、蓮を見つめた。蓮も和也に呼ばれると、ゆっくりと視線を和也に向けた。
見つめあった2人の目は鋭くて、この雨みたいに冷たく感じた。
俺はたまらずにゾッとしたが、2人ともひるまない……。
そこで和也はゆっくりと口を開いた。
「なぁ、日代………」
どくんどくんと心臓がなって汗をかく。
すると和也は俺に視線を向けて手をぎゅっと握って、にっこりと優しく笑った。
まるで「安心して。」と言ってるみたいに聞こえた。
蓮は繋がれた手を見て眉を潜め唇をかみしめて、和也の言葉を待った。
「……実は…俺たちな……」
和也が言うとバシャッと蓮の方から雨がはねる音が聞こえた。
「つきあっ………!?」
『付き合ってるんだ。』と和也がそう言おうとした瞬間、蓮が俺まで走ってきて俺の腕を強くつかみ、俺を蓮の方へ引き寄せた。
「蓮っ……!?」
俺の体はバランスを崩して蓮の方へ倒れ込んだ。
蓮の肩に俺の体全体が かかるようになっている。
蓮…………なんだか…痩せた………?
そんなに日にちが経っていないのに、俺にはそう感じた。
「おいっ!日代……!!
明を離せよ…!」
「…………。」
蓮は俺の腕をつかんで自分に引き寄せたま動かずに下を向いて無言だった。
よく見ると なんだか目の下にクマができてるし、あきらかに体調が悪そうだった。
「………蓮…?」
俺が声をかけるとピクリと反応し視線を俺に向けた。
その目は今にも泣きそうで………俺の胸をえぐりとるように罪悪感がつのった。
「れ………、っ!?」
もう一度 声をかけようとした次の瞬間、蓮は俺の手に蓮が使っていた傘をあずけてクルリと背を向けた。
「え………、蓮…!?これ、傘…!!」
俺が蓮に傘を返そうと小走りで追いかけると、
「いいから!」
蓮は背を向けたまま強い口調でそう言うと雨の中、バシャバシャと雨を跳ねさせて走っていってしまった。
「蓮…………。」
俺は雨の中その背中を見つめて、動けずにいた。
そして その日は、和也も俺も無言で そのまま自分の家に帰った。
白い傘を指しながら――…………。
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