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☆姉のありがたさ
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コンコンとドアを叩く音が聞こえる。
「ちょっと明ーーー??
大丈夫なのー?帰るなり部屋に閉じこもっちゃってーー!
昨日 夕飯食べてないんでしょーー?」
部屋の外から姉ちゃんの声が聞こえる。でも、俺は何故かダルくてベットから起き上がれずにいた。
「うん………、大丈夫……」
俺は姉ちゃんにも聞こえるくらいの声の大きさで答えると
「じゃあ……私 出かけてくるから戸締りよろしくねー?ご飯ちゃんと食べんのよー?」
と心配そうな声がし、少し物音がしてから「行ってきまーす!」と言ってドアがバタンと閉まる音が聞こえた。
「……………。」
昨日は家に帰ってからシャワーを浴びた。
暖かい体でお風呂から浴びて時間が経ってもお腹が全然すかなくて…夕飯も食べずにベットに倒れ込み、そのまま眠りに落ちた。
途中で「ただいまー!」という姉ちゃんの声が聞こえたけど……。
なんだか体が重くて掠れる声で「…お帰り……」と呟き、また眠気が襲ってきて寝てしまった。
チラッと時計を見ると9時くらいだった。………暑い……夏だなぁ……。
ベットに寝ていても蒸し暑くて俺はグダグダとベットから起き上がった。
「………蝉だ…」
どこからともなく蝉の声が聞こえる。誰もいない部屋で俺はそんな言葉をポツリと呟いた。
喉が渇いたからコップに水を注いでゴクゴクと飲み干した。
…………お腹、すかないなぁ………。
顔を洗いに洗面所に向かう。顔を洗うと、なんだかスッキリするなぁー……。
タオルで顔を拭き、鏡で自分の顔を見た。
「酷い顔…………」
鏡に映った俺の顔は目の下にクマがあり、いかにも具合が悪そうな顔をしていた。
なんか食べなきゃダメかなぁ……なんて思ってリビングに行くと、姉ちゃんが作ってくれたのかテーブルには炒飯とサラダが乗っていた。
『ちゃんと食べること!』
なんて書き置きが置いてあって紙の下の方に『プリンもあるよ♡』なんて昔と変わらない字に俺は胸が熱くなった。
「家事がしたくない。家に帰った時 一人がさみしい。」と言っていた姉ちゃんに、昨日とりこまなかった洗濯物やご飯をいつの間にかやらせてしまっていた。
………仕事で疲れてるのに………。姉ちゃんはきっと色んな人からの期待にストレスを感じてるはずなのに……
そんな姉ちゃんに俺は昨日、顔を見て『お帰り』も言えなかった。
一緒に暮らしているはずなのに……寂しい思いをさせてしまっている気がした。
「ごめんっ………姉ちゃん…ごめっ……。ありがと……」
ボロボロと涙を流しながら炒飯を口いっぱい頬張った。
美味しい…………。お腹がすいていたわけじゃないけど、胸がじんわりと暖かくなり、すぐにペロリと完食した。
「よしっ……!!」
ご飯を食べて、歯を磨き、着替えをして皿を洗った。
あ、昨日はいた靴 濡れてないかな……?そう思って玄関に向かうと目に白い傘がちらついた。
あ…………。この傘………、どうしよう……。
返した方が……いい……よね……?
俺は靴を履いて傘を持ち、アパートへ鍵をかけた。
傘とアパートの鍵以外は何も持たずにアパートの外へ歩き出した。
蓮…………。俺、今から行くね……。
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